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認知症ポジティ部

医療・健康・介護のコラム

認知症の人が、認知症になった人の相談に応じる取り組み…当人同士だからこそ、話せることもある

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当人同士だからこその理解…「ピアサポート」の試み 注目

認知症当事者らの集いの場で話す平井さん(奈良市で)

 認知症になった人の相談に、認知症の人が答える新しい取り組みが始まっています。同じような状況にあるからこそ、相談者が聞きたいこと、相談員として言えることもあるそうです。相手の気持ちに寄り添う「ピアサポート」の試みとして、注目されています。(板垣茂良)

相談員として気持ちに寄り添う

 奈良県天理市の平井正明さん(61)は、奈良市の一般社団法人「SPSラボ若年認知症サポートセンターきずなや」で毎週木曜に開かれている、本人や家族を対象とした集いの場で、ピアスタッフ(相談員)を務めている。

 相談者の多くは50代。「すぐに何もわからなくなってしまうのですか?」などと、不安そうな様子でやって来るという。

 平井さんは、自分自身のこれまでの経過も伝えながら、「人にもよるけれど、症状はすぐに進むものでもないよ」と話したり、「今できることを大切にしましょう」と励ましたりする。

 平井さんは54歳の頃、後頭部に違和感を覚えて、病院で検査を受けた。脳の 萎縮いしゅく や血流の低下が確認された。

 当時、大阪府内の製造会社で管理職として働いていたが、次第に、複数の仕事を同時に進めることや、報告書を作成することが難しくなった。56歳の時、認知症の初期段階と診断されたのを機に自ら退職した。

 「自分が今、できることは何だろう」。そう考えていた4年前の春、「きずなや」や認知症グループホームを運営する精神保健福祉士の若野達也さん(48)と知り合った。

 若年性認知症の本人や家族を支援してきた若野さんは、平井さんに提案した。「本人同士にしか理解し合えないこともあるはず。一緒に働きませんか?」

 平井さんは現在、「きずなや」で、若年性認知症支援コーディネーターの看護師らと一緒に相談員として活動するほか、県内2か所で月1回ずつ開かれる出張相談にも出向いている。2020年度から県の委託事業になり、月2万~3万円の給与を得ている。

 天理市の男性(60)は、2年前に平井さんに相談したことをきっかけに、趣味の水泳を再開できた。

 男性は、アルツハイマー型認知症の診断を受けたことで、それまで続けていたプール通いをやめていた。自転車で道に迷うことを心配した妻が、車で送迎すると言ってくれたが、心理的な負担を感じてしまったという。

 集いの場で、「もう一度、プールに通いたい」と平井さんに思いを打ち明けた。平井さんは、安心して通える方法を若野さんたちと一緒に考えて、GPS(全地球測位システム)機能付きのスマートフォンを持ち、行き帰りの出発時に必ず妻に連絡することを提案した。

 更衣室で男性が一人で着替えられるかどうかも、妻の心配事だったが、実際にできていることを見せ、納得してもらったという。

 男性は「平井さんも同じ認知症だからこそ、自分の気持ちを素直に話すことができた」と振り返る。

 平井さんは「当事者であることを生かし、悩んでいる人の気持ちに寄り添っていきたい」と話している。

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