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「子どもが欲しかった」卵巣がん患う女性の喪失感…がん患者にどう寄り添えば
「子どもを産むことができなくなった」「働きたいのに働けなくなった」――。
がんになると、こうした喪失感を持つことが少なくない。年々、がん患者は増え続けていて、今は2人に1人はがんになると言われている。私たちは、この病気とどのように向き合っていけばよいのだろうか。(利根川昌紀)
不正出血、腹部の痛み…
愛知県に住む40歳代の女性は2018年7月、子宮にがんが見つかった。前年から不正出血が続き、腹部にはチクチクした痛みを感じていた。「がんなのではないか」という思いはあったが、医療機関を受診しても、なかなか診断はつかなかった。
症状が出てから1年以上がたち、子宮体がんと診断された。「告知されたとたんに頭がまっ白になりました」。そのあとのことは、ほとんど記憶がない。
10日後、子宮などを摘出することになった。「もう不安で、怖くて、ドキドキして……」。手術の日までほとんど眠れなかった。
手術を受けると、がんは卵巣にも見つかった。子宮のがんは、卵巣にできたがんから転移してきたものだと分かった。
子どもを見るとつらい
手術後、約3か月にわたり抗がん剤治療を6コース受けた。今も定期的に検査を受けているが、再発はしていない。
だが、体力が落ち、長時間歩けなくなった。「がんになるまで重い病気にかかったことはなく、健康には自信がありました。今は、『私はがんになりやすいのではないか』とずっと不安があります」と話す。排尿などのコントロールも難しく、特に外出時には気になってしまう。
なによりつらいのは、子どもを産めなくなったことだ。
「20歳代で結婚し、30歳代で子どもは2人――。これが私の夢でした。しかし、子宮や卵巣がなくなったことで、それはかなわなくなり、ものすごい喪失感があります」
がんが見つかる3年ほど前に結婚した。「夫や義母は、私の体のことを気遣ってくれてとてもありがたいです。でも、長男である夫の子どもを産めず、申し訳なくて……」
マンションのエレベーターで小さい子どもと一緒になったり、保育園の前を通ったりすると、「子どもはかわいいなぁ」と思う反面、「私は産むことができなかった」と落ち込んでしまう。友人から出産報告が届くと、つらい気持ちになる。
「本来、おめでたいことなのに、そんな風に感じてしまう自分のことがとても嫌になります。(がんが分かって4年がたつのに)『自分は成長していないなぁ』と、さらに自分にがっかりしてしまいます」と心情を吐露する。
買い物をしていて店員から「お母さん!」と声をかけられたり、同窓会で「10年たっても20年たっても集まろうよ」と言われたり。日常生活の中での何げない一言に傷つくことも多い。つい、「がんが再発するかもしれない」と考えてしまい、10年先の未来を描きづらい。
心が解き放たれるのは、SNSでつながる「がん友」と交流するときだ。「『がんイコール死』と思っていましたが、『みんな生きている』ということを実感して元気になれます」と笑顔を見せる。
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