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週2.5~10時間の運動で死亡リスク3割減 米国11万人超を30年追跡

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 週に150~600分(2.5~10時間)の運動により、全死亡リスクが3割低下することが分かった。米・Harvard T.H.Chan School of Public HealthのDong H.Lee氏らは、同国の二大前向きコホート研究に登録された11万人超を30年以上追跡し、余暇時間の身体活動と死亡リスクの関係を解析した結果をCirculation( 2022年7月25日オンライン版 )に報告した。

推奨量以上の運動の効果を検討

週2.5~10時間の運動で死亡リスク3割減 米国11万人超を30年追跡

(C)Adobe Stock ※画像はイメージです

 定期的な身体活動が心血管疾患(CVD)や早死リスクの低下に関連していることは十分立証されている。2018年の米国保健福祉省(HHS)の身体活動ガイドライン(GL)は、少なくとも週に中程度の運動を150~300分または激しい運動を75~150分、または両者と同等の強度の運動を行うことを推奨している。またHHSのGLに基づき米国心臓協会(AHA)では、週に少なくとも中程度の有酸素運動を150分、または激しい有酸素運動を75分または両者の組み合わせを推奨している。しかし、推奨以上の運動が心血管に対してメリットになるのかデメリットになるのかは明らかでない。そこでLee氏らは、長期に自己申告形式による身体活動調査を複数回行い、中高年の長期にわたる身体活動と死亡リスクの関係を調べた。

 対象は1988~2018年にNurses’Health Study(NHS)に参加した女性とHealth Professionals Follow-up Study(HPFS)に参加した男性の計11万6,221人。主な背景は女性が63%、白人が96%、平均年齢は66歳、平均BMIは26だった。30年間の追跡期間中、2年ごとに妥当性が検証された自己申告形式の質問票を用いて健康情報、診断名、家族の既往歴、生活習慣(喫煙・飲酒など)、運動習慣などを計15回評価。Cox回帰分析を用いて長期余暇時間の身体活動と全死亡・死因別死亡との関係を推定した。中程度の身体活動は、ウォーキング、低強度の運動、重量挙げ、体操と定義。激しい運動はジョギング、ランニング、水泳、サイクリング、その他の有酸素運動と定義した。

激しい運動150~300分/週で全死亡リスク21~23%減

 298万4,545人・年(中央値26年)の追跡期間中に4万7,596例が死亡した。

 激しい運動を行わなかった群に対し、GLが推奨する激しい運動を75~149分/週行った群では、全死亡リスクが19%〔ハザード比(HR)0.81 、95%CI 0.76~0.87〕、CVD死リスクが31%(同0.69、0.60~0.78)、非CVD死リスクが15%(同0.85、0.79~0.92)低下した。激しい運動を推奨量の2~4倍(150~299分/週)行った群では全死亡リスクが21~23%、CVD死リスクが27~33%、非CVD死リスクが19%低下した。

中等度の運動300~600分/週で全死亡リスク26~31%減

 中等度の運動を行わなかった群に対しGLが推奨する中等度の運動を150~224分/週または225~299分/週行った群では、全死亡リスクが20%(HR 0.80、95%CI 0.77~0.83)と21%(同0.79、0.76~0.82)低下、CVD死リスクが22%(同0.78、0.72~0.84)と25%(同0.75、0.68~0.82)低下、非CVD死リスクが19%(同0.81、0.78~0.85)と20%(同0.80、0.77~0.84)低下した。中等度の運動を推奨量の2~4倍(300~599分/週)行った群では全死亡リスクが26~31%、CVD死リスクが28~38%、非CVD死リスクが25~27%低下した。

 これまでの研究で、マラソン、トライアスロン、長距離自転車レースなど長時間の高い強度の持久運動では、心筋線維症、冠動脈石灰化、心房細動、心突然死などの心血管有害事象リスクが上昇する可能性が報告されている。

 今回の検討では、推奨量の4倍以上の運動を行った者で心血管有害事象は認められなかった。しかし、長期に推奨量の4倍以上の激しい運動(300分/週)または中等度の運動(600分/週)を行った者で、死亡リスクのさらなる低下は認められなかった。

 以上から、Lee氏らは「米国の二大前向きコホート研究に登録された11万人超を30年以上追跡した結果、激しい運動を150~300分/週、中等度の運動を300~600分/週または両者の組み合わせと同等の運動を行うと、死亡リスクが最も低下することが分かった」と結論している。(大江 円)

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