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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナ「第7波」到来 爆発的に増える感染者 数えるならば目的を

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 本稿を執筆している7月30日、日本では爆発的な新型コロナウイルス感染症の流行拡大が起きています。いわゆる、「第7波」です。

これまでは地域ごとの流行だったが

新型コロナ「第7波」到来 爆発的に増える感染者 数えるならば目的を

 特徴的なのは47都道府県全てで爆発的な流行が、ほぼ時期を同じくして起きていることです。これまでの「波」では、流行拡大が起きている地域と、そうでない地域の明らかな差が見られました。だからこそ、都道府県ごとの緊急事態宣言とか「マンボウ(まん延防止等重点措置)」といった対策がとられたのです。しかし、今回、感染爆発を免れた自治体は一つもありません。

 ウイルスは県をまたいで移動するような飛行能力を持ちません。(ほぼ)人だけがウイルスを各地に運び、そこで流行を起こすのです。人の活動が活発になり、これが面的に広い感染拡大を起こしています。

 第7波は過去に例がないほどの巨大な感染の拡大です。世界中を見ても、現在、日本ほどコロナが流行しているところはありません。唯一、韓国のみが日本に並行するように感染者が増加しています。( https://ourworldindata.org/covid-cases

巨大感染の背景は

 では、なぜ日本の第7波はかくも巨大な感染に至っているのか。大きな理由は三つあると僕は思います。

 一つ目はオミクロン株のうち、さらに感染性が高まった「BA.5」の存在です。現在、僕が住んでいる神戸市でも、そしておそらく日本全国的に、従来のオミクロン株からBA.5への置き換わりが進んでいます。このため、第7波はこれまで以上に流行が拡大しやすくなっています。

 二つ目は、我々人間サイドの免疫の問題です。新型コロナワクチンは非常にパワフルなツールで、自分への感染、他人への感染、そして重症化や死亡のしやすさなど、あらゆる側面で新型コロナからわれわれの体を守ってくれていました。しかし、2回の予防接種の効果は時間とともに落ちてしまい、多くの「2回しかワクチンを打っていない人」の感染を防御できなくなっています。

 感染の中心は活動性の高い若者であり、オミクロン株が流行するようになってからは小児です。若者の多くは3回目のワクチン接種を受けておらず、小児に至っては最初の2回のワクチンを受けていないことも多いです。

 日本がこれまで感染拡大を防ぎ、死亡者を抑制するという面で、他の多くの国よりうまくいっていた最大の理由の一つが効果的なワクチン接種の普及でした。この最大の利点が活用できていない現在、かつてないほどの感染拡大が起きているのです。

 三つ目の理由は、人々の行動です。2年以上にわたるコロナとの闘いで、もうみんな疲れています。諸外国では感染対策も緩められてきており、マスクも日本人ほどしていません。「なんで、日本だけこんなに厳しいコロナ対策するの?」とうんざりする気持ちはよくわかります(僕もうんざりしていますから)。

 こうした中、人々の活動が活発になり、あちこちで移動や集団の形成が行われて感染が拡大したのです。47都道府県全てで感染拡大が起きたのが象徴的なのです。人間の移動だけがウイルスを動かすのですから。

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岩田健太郎(いわた・けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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