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「胃ろう」の接続コネクター 旧規格「差し込み式」と新規格「ねじ込み式」…介護の負担増で併用可に

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 栄養剤やミキサー食を胃にチューブで入れる「胃ろう」。注入ラインで使う接続コネクターを国際規格に切り替える動きが進んでいますが、病児の介護を担う親や高齢者の家族などから反発があり、旧規格との併用が決まりました。(鈴木敦秋)

国際規格に沿う

 胃ろうでは、液体状の栄養剤を点滴のようにして上から落とすか、ミキサー食や半固形化栄養剤をシリンジ(注射筒)から投与することで栄養を注入します。いずれの場合も、おなか側のチューブとの間にあるコネクターに接続します。

 昨今、このコネクターに、別の輸液ラインが誤接続される恐れが指摘されていました。このため、厚生労働省は2018年、誤接続防止と製品の安定供給のためとして、国際規格に沿った新規格へ切り替えることを決定。昨年、旧規格のコネクターを今年11月末までに出荷停止する通知を自治体に出しました。

 旧規格のコネクターの形状は差し込み式。新規格はねじ込み式で、シリンジの先端部が細くなります。

 しかし、同省の方針に対し、日本で独自に開発され、普及してきたミキサー食や半固形化栄養剤の利用者側から反発が出ました。

 ミキサー食は、おかゆや主菜、副菜をミキサーにかけ、ペースト状にしたもの。半固形も同じく、食べ物を口でかみ砕き、唾液と混ぜたものに近い軟らかさと粘度があるものをいい、消化を助け、 嘔吐おうと誤嚥ごえん 性肺炎、下痢を防ぐ効果があります。

 食事の時間も、液体状が1時間以上かかるのに比べ、15分程度で済みます。在宅療養では8割近くがこれらを利用しているとされ、ミキサー食では、家族が同じ食材で食事をとる意義も強調されてきました。

存続求める声続々

 日本重症心身障害学会と日本重症心身障害福祉協会、全国重症心身障害児(者)を守る会は、一昨年12月、旧規格の存続を求め、検証データを示しました。

 ねじる動作が加わる新規格では、注入時間が1・3倍になります。重症心身障害者施設で働く看護師のコネクターの着脱回数は、利用者1人当たり11回(最大65回)。看護師の半数は手首痛があり悪化が心配など、介護者や看護者の負担増を説明しました。

 日常的に医療的支援が必要な医療的ケア児の家族らでつくる「ミキサー食注入で健康をのぞむ会」は、注入が困難になることで症状が再び悪くなるリスクなどを訴えました。

 半固形化栄養剤の開発者の一人、千里リハビリテーション病院(大阪府箕面市)の合田文則医師は、「新規格のシリンジでミキサー食を押すと、圧が強い。介護者の3分の2は握力が20キロ以下、患者の半数は10キロ以下で、注入が困難だった」としています。

 こうした主張を受け、同省は課題の把握と対応策を検討する研究班を設置。その報告を踏まえ、今年5月、患者側の理解や情報の共有などを前提に旧規格の使用も可能としました。

 研究班で代表を務めた名古屋大学病院の長尾能雅教授(患者安全学)は、「患者の安全確保と利便性の両方が可能な製品開発などのため、関連学会などや企業との協議を継続する」と話しています。

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