山中龍宏「子どもを守る」
医療・健康・介護のコラム
浅い川でも子どもは溺れる…足を滑らせ尻もちをつくと、流される力は最大で5倍近くに
これまで、プールの事故についてお話ししてきました。プールは人工物で面積も狭く、どのプールもほぼ同じ構造なので、 溺水 等を予防するための対策もとりやすいのですが、川や海は、それぞれの場で状況が異なっており、水深や流れ、気象条件などが刻々と変化するため、自然環境下での溺水を予防することはたいへん難しい課題です。今回は、川の水難事故についてお話しします。

イラスト:高橋まや
多い河川での子どもの事故
日本には、約3万5500の河川(1級、2級、準用)があり、ほぼすべての市区町村に川があります。毎年、川で溺れる事故が発生しています。
水難事故に関して、警察庁生活安全局生活安全企画課の 「令和3年における水難の概況」 をみると、全国で1395件(前年対比+42件)発生し、水難者は1625人(前年対比+78人)、そのうち死者・行方不明者は744人(前年対比+22人)でした。
中学生以下の発生件数は119件(前年対比+2件)、水難者は183人(前年対比+7人)、その内訳は、未就学児童が50人、小学生が89人、中学生が44人で、死者・行方不明者は31人(前年対比+3人)でした。この31人を発生場所でみると、河川が18人で58%を占めていました。ほかは、湖沼池が6人、海が5人、用水路が2人です。行為別にみると、水遊びが15人、水泳が4人、魚とり・釣りが2人、通行中が1人、その他が9人で、水遊びで約半分が占められていました。2017年以降、これらのデータにほとんど変化はみられません。
社会の大きな負担に
総務省消防庁の「令和3年版 救急・救助の現況」の救助編 をみると、2020年中の水難事故に対して救助隊等が出動したのは3942件、実際に救助活動をした件数は2850件でした。これらの救急活動を行うために出動したすべての人員は、消防職員や消防団員を合わせると8万3460人、そのうち実際に救助活動を行った人員は4万2566人でした。水難事故の救助活動1件当たり約15人の人が活動していました。水難事故に対して出動した車両は2万5201台でした。
これらのデータから、水難事故は社会に大きな負担をかけていると言えます。
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