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望まない妊娠を防ぐ「緊急避妊薬」を薬局で買えるようにしたい 性暴力に悪用されると慎重論も

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 性犯罪や避妊の失敗による望まない妊娠を防ぐ「緊急避妊薬」。日本で入手するには医師の診察と処方箋が必要です。厚生労働省は昨年から、市販薬として医師の診察なしでも薬局で買える「OTC化」について有識者検討会で議論を続けています。(西田真奈美)

阻止確率は約8割

 日本で使われる緊急避妊薬には2011年に承認された「ノルレボ」と後発薬の「レボノルゲストレル錠」があります。性行為から72時間以内の服用で、妊娠を防ぐ可能性が高まります。合成黄体ホルモン「レボノルゲストレル」には排卵を遅らせる効果があります。受精卵の着床を妨げる可能性も考えられています。

 ノルレボ以前から緊急避妊に用いられてきた中用量ピルと比べて避妊効果が高く、吐き気などの副作用は少ないとされています。ただし妊娠を阻止できる確率は約8割。月経が来ると避妊の成功を意味します。月経が予定より7日以上遅れている時や経血量が少ない場合は妊娠しているかもしれません。妊娠検査薬の使用や産婦人科の受診を検討します。

 海外約90か国では処方箋なしで、薬局などで購入できますが、日本では医師による対面かオンラインの診察と処方箋が必要です。公的医療保険の対象外のため、診察代と薬代は全額自己負担となり、6000円~2万円かかります。

 安全な避妊方法の普及を目指す任意団体「#なんでないのプロジェクト」が、対面診察後に緊急避妊薬を入手した女性1239人に行った調査で、意図しない妊娠への不安を感じたきっかけを複数回答で尋ねました。「男性用コンドームの破損や脱落」が7割近くに上り、「 ちつ 外射精」(22・6%)、「避妊なし」(16・8%)、「性暴力・性虐待」(9・4%)でした。

 OTC化を推進する市民団体の共同代表で、産婦人科医の遠見才希子さんは「意図しない妊娠は女性の人生に大きく関わる問題。緊急避妊薬を入手しやすくすべきです」と強調します。

 緊急避妊薬のOTC化は17年に厚労省の検討会で議論したものの、「時期尚早」として見送られました。

 その後、市民団体の要望があり、20年には政府の「男女共同参画基本計画」に、専門の研修を受けた薬剤師による説明などを条件にOTC化を検討する方針が盛り込まれました。これを受けて21年に検討会の議論が再開し、海外の実施状況なども報告されています。厚労省は「専門家が指摘した課題を整理し、対応策を検討したい」としていますが、先行きは不透明です。

慎重対応求める声も

 OTC化には慎重な対応を求める声もあります。日本産婦人科医会が、会員の産婦人科医に行った21年の調査で、9割近くがOTC化に何らかの「懸念あり」と答えていました。理由には「転売や性暴力に悪用される」「男性のコンドーム使用率の低下」「服用後の妊娠への対応の遅れ」などの可能性を挙げています。

 同会常務理事の種部恭子さんは「診察は性暴力の相談の入り口となり、支援につなげる役割もあります。日本は確実な避妊法の普及率が低く、同意のない性交や避妊に協力しないことは性暴力だという認識が不十分です。性教育の推進も必要です」と指摘します。

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