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ココロブルーに効く話 小山文彦

医療・健康・介護のコラム

【Track27】「パニック発作、在宅勤務なら復職可」の診断は?―岐路にやってきたテレワーク―

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 「コロナ禍」において、テレワークは急速に拡大しました。内閣府によると、コロナ前の2019年12月の時点で、全国のテレワーク実施率は10.3%でしたが、最初のパンデミック直後の20年5月には27.7%へと一気に上昇しました。その後、緊急事態宣言の有無などによって多少の波があり、21年10月には32.2%、日本生産性本部による別の調査では22年1月は18.5%に落ち着いています。

 本来、「働き方改革」の中で、「ワーク・ライフ・バランス」への方策として推奨されたテレワークですが、コロナ禍の在宅勤務者には「ワーク・ライフ・ミックス」ともいえる日常が突然訪れました。それに伴って、次第に、仕事上のコミュニケーションの難しさや生活習慣と健康の保持にかかわる課題も浮上しました。また、メンタル不調を訴える人の中には、職場などの社会集団に身を置くことが苦しいと感じる病態もあり、在宅勤務の検討が必要かどうかなど、働き方をめぐる合理的配慮も求められています。

出勤途中の電車内で起こった異変

【Track27】「パニック発作、在宅勤務なら復職可」の診断は?―岐路にやってきたテレワーク―

 2度目の緊急事態宣言が解除された2021年4月のある朝、都内の企業に勤務するセリナさん(24)は、出勤途中の電車内で、突然の 動悸(どうき) と息苦しさを覚えました。満員の車内で立ち続けていたせいか、めまいも強くなり、何ともいえない恐怖感に見舞われたため、次の停車駅で下車しました。その日のうちに近くの病院を受診し、自律神経系の乱れである「パニック発作」と診断され、それ以降、紹介された心療内科クリニックに通院中です。

 主治医からは、「パニック発作のため、10日間要休業」の診断書が出され、動悸や呼吸困難などの不調を感じた時は、抗不安薬「アルプラゾラム」を服用するよう指導されていたようです。当時、私は、彼女が勤務していた企業のメンタルヘルス管理医を務めていましたが、後に彼女の復職時に関わりを持つことになります。

 会社の総務課に連絡したセリナさんは、自身の状況と診断書について伝え、初めての休業生活に入りました。自宅で数日が経過しても、あの発作を思い出すと、電車に乗ることだけでなく、近所に買い物に出かけることにも不安を覚え始めました。その一方で、仕事に行かず、ただ不安を抱えながら部屋にこもっている生活では、時間を持て余し、気分も安定しないままでした。

 そのうち、「これだったら、在宅でも働いているほうがいい」と思うようになりました。

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小山 文彦(こやま・ふみひこ)

 東邦大学医療センター産業精神保健職場復帰支援センター長・教授。広島県出身。1991年、徳島大医学部卒。岡山大病院、独立行政法人労働者健康安全機構などを経て、2016年から現職。著書に「ココロブルーと脳ブルー 知っておきたい科学としてのメンタルヘルス」「精神科医の話の聴き方10のセオリー」などがある。19年にはシンガーソング・ライターとしてアルバム「Young At Heart!」を発表した。

 2021年5月には、新型コロナの時代に伝えたいメッセージを込めた 「リンゴの赤」 をリリースした。

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