知りたい!
医療・健康・介護のニュース・解説
「一人暮らしをしたい」 障害者の夢実現に向けて国が支援…地域の環境整備が課題
障害者が共同で暮らす「グループホーム」について、厚生労働省は、将来的に一人暮らしを希望する人が集まって支援を受ける仕組みを創設する。障害者総合支援法を改正し、2024年度にも導入したい考えだが、障害者の一人暮らしを地域で支える環境を整備できるかなど、関係者の間では慎重意見も根強い。(村上藍)
「グループホーム」新たな仕組み
「いつかは一人暮らしをしたい」。社会福祉法人「東京都手をつなぐ育成会」が運営する大田区内のグループホームで暮らす赤間春香さん(23)は夢を語る。
この施設は障害者の一人暮らしに向けたサポートを実施している。東京都が独自に導入したもので、「通過型」と呼ばれている。
グループホームは、住宅街にあるアパートなどで、障害者が世話人のサポートを受けながら、共同生活をする場所だ。利用期間に制限はなく、暮らし続けることを前提にする。一方、通過型は入居期間が設定されていて、一人暮らしに向けた支援を受けられる。
赤間さんの暮らす施設の場合、1年程度の利用だ。現在は、軽度の知的障害のある6人が住む。それぞれが共有スペースで食事をとって仕事に行き、個室で生活する。
赤間さんは日中、企業で清掃の仕事をしている。部屋の掃除や金銭管理が苦手だが、世話人とともにやり方を覚え、少しずつできるようになった。
ただ、現状では一人暮らしは難しいため、退去後、まずは利用期間の制限のない滞在型のグループホームに移る予定だ。
地域の環境整備「不十分」の声
全国のグループホームでは、約15万5000人が生活している。厚生労働省の調査では、「将来、一人暮らしをしてみたい、パートナーと暮らしてみたい」という利用者は約4割いたが、希望者に一人暮らしに向けた支援をする施設は約2割にとどまる。
このため、国は既存のグループホームで一人暮らしを希望する障害者への支援を強化するとともに、東京都の「通過型」を参考とした、新たな仕組みを創設することにした。
具体的には、期間を区切って、金銭管理や家事の練習、住宅の契約の助言などの支援を行う。社会福祉士などの専門職を配置し、一人一人の支援計画をつくる。退去後の相談にも応じる。ただ、希望する全ての人が、一人暮らしが可能なわけではないため、利用者の状況に応じ、利用期間の延長や、既存のグループホームへの移行もできるようにする。
法改正に向けた議論では、慎重意見も多かった。利用者の入れ替わりが多くなると、施設の経営が不安定になる懸念があるほか、一人暮らしの障害者を地域で支えていく環境の整備が十分ではないという課題もある。
実際、東京都の通過型の施設を経て一人暮らしへ移行した人のケースでも、安定した生活を続けるのは、地域の福祉サービスを利用したとしても容易ではないという。
全国精神保健福祉会連合会の岡田久実子理事長は「一人暮らしへの支援は、本人の希望をかなえるためで、効率優先の運営や成果主義に陥らないでほしい」と話している。
【関連記事】