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女性に多い「急性肝性ポルフィリン症」 主な症状は激しい腹痛…新薬で症状を抑える効果期待

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 原因不明で繰り返す腹痛の中には難病「急性肝性ポルフィリン症」が潜んでいる可能性があります。放置すると命に関わることもあり、早期診断と適切な治療が大事です。これまでは症状が出た後の治療法しかありませんでしたが、昨年登場した新しい注射薬は症状自体を抑え、生活の質を上げる効果が期待されています。(大沢奈穂)

遺伝子変異が原因

 急性肝性ポルフィリン症は、体中に酸素を運ぶヘモグロビンの材料となる物質「ヘム」を作るために必要な遺伝子に変異があることが原因となります。

 遺伝子変異だけで発症するわけでなく、鎮静薬などの一部の薬や、女性ホルモン、ダイエットなどが発症の引き金となります。

 発症する仕組みは、まず、肝臓内でヘムが作られなくなります。その不足分を補おうと、ヘムを作るために必要な酵素が過剰に作られます。

 そして、ヘムが作られる途中段階の物質であるアミノレブリン酸(ALA)やポルフォビリノーゲン(PBG)が増えます。両物質は神経の働きに悪影響を与えるので、全身で様々な症状を引き起こします。

 高い頻度の症状は激しい腹痛です。これに加えて、▽手足の脱力や背中の痛みなどの神経症状▽不安感や幻覚などの精神症状▽ 嘔吐おうと や便秘などの自律神経症状▽日光にあたる部位が赤くなる皮膚症状――の4症状のうち一つ以上あれば、この病気が疑われます。

 症状が出た時に尿検査などで診断します。適切な治療を受けないと、呼吸筋 麻痺まひ などで、命に関わることもあります。

国の難病に指定

 国の難病に指定されており、国内の患者数は約90年間で926人という報告があります。女性患者が多く、男性の2~5倍程度です。

 この病気に詳しいJA尾道総合病院長の田妻進さんは「医療従事者の中でも認知度が低いため、患者が見逃されている可能性があります。原因不明の腹痛に悩む人は、総合診療科に相談してください」と呼びかけています。

 治療はこれまで、腹痛などが出た後に、ヘムを点滴して症状を抑えたり、ブドウ糖やモルヒネを投与して症状を和らげたりする方法しかありませんでした。

 新しい治療法として、症状の抑制を期待できる治療薬「ギブラーリ」が2021年8月に公的医療保険の対象になりました。

 ギブラーリは月1回、注射します。たんぱく質を作る時の仲介役「メッセンジャーRNA(mRNA)」に働きかけて、酵素の働きを抑え、ALAやPBGが増えないようにします。

 5年前に診断された東京都内の会社員女性(24)は以前、生理前は立ち上がれないくらいの腹痛や吐き気に襲われ、2か月に1回、1週間程度入院して、治療を受けていたといいます。

 しかし、ギブラーリを使い始めたことで症状を防ぐことができ、「腹痛を気にせず、仕事に打ち込み、旅行を楽しめるようになった」と喜んでいます。

 患者の治療にあたっている東京都済生会中央病院の総合診療内科部長の足立智英さんは「新しい薬で症状をかなり抑制できるようになりました。早期診断から早期治療につなげてほしいです」と話しています。

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