東ちづる 山あり谷ありダイアリー
医療・健康・介護のコラム
「眉間にシワ寄せて逝きたくない」…言葉通り、優しい顔でこの世を去った父
医師に願いが通じ…
肝硬変で入退院を繰り返しつつですが、長生きをすると思っていました。ですが、終末をどうしたいかの話し合いから1年半後、帰らぬ人となってしまいました。肝不全でした。
そこで、こんなことがあったのです。
父の意識がもうろうとし、耳元で話しかけても反応は薄く、手を握ったりさすったりしながら、このまま看取ることになりそうだと私たちは覚悟をしました。
すると、父の眉間にシワが入ったのです。グッと深く。
「眉間のシワを取ってやってください。その点滴で肝臓に負担がかかるのは仕方ありません。もう機能していない肝臓より、父の尊厳を守りたいんです」
今考えれば、私たちはお医者さんにむちゃなお願いをしたものです。医療従事者としては、そんなマニュアルにないことをお願いされても困惑します。そこは治療をする集中治療室であって、緩和ケア病棟でもホスピスでもないのですから。
ですが、お医者さんは父と交信するかのように対面し、無言で部屋を出て、無言で点滴を付け替えてくださいました。眉間のシワが消えた優しい表情の父は、「ありがとの。これでもうええよ」と言っているようでした。
その翌日、スーッと息を吸って、フーッと吐いて、息を引き取りました。
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