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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

ビニールプールでも子どもは溺れる そのわけとは…大人の「目の届く範囲」では不十分

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 前回は、「安全最優先」とされている保育の場でのプールの監視についてお話ししましたが、一般のプールでの 溺水(できすい) 事故のニュースもよく耳にします。ニュースでは、施設のずさんな管理や監視体制の不備などが指摘されますが、どうすれば溺水事故を防ぐことができるのでしょうか? また、家庭用の小さなビニールプールでの事故もあとを絶ちません。本格的な夏を前に、お父さん、お母さんに知っておいてもらいたいこともまとめました。

子どもの溺水事故が繰り返されるのはなぜ…プール活動中の映像を解析し、判明した事実とは

イラスト:高橋まや

監視の検証実験をした

 2018年春、われわれのグループは、プールにおける監視の実態や有効性を検証する実験を行いました。

 プールの底に3メートル間隔で16個のマークを置き、カバーで隠しました。カバーにはワイヤーがついていて、遠くから引っ張るとカバーが外れてマークが見える仕組みです。

 監視員がプールサイドに立ち、マークが現れてから、そのマークに気づくまでの時間を計測しました。どのワイヤーを引っ張るかは、監視員にはわからないように実験者が不規則に指示を出します。

 監視員役は全部で15人。一つの見守り範囲の条件で、1人当たり3回実験しました。その結果は次の通りでした。

  • 3メートル×3メートルの範囲では、マークを発見するまでの平均秒数は1.90秒、最大で4.33秒。
  • 9メートル×9メートルの範囲では、マークを発見するまでの平均秒数は3.32秒、最大で10.05秒。

 範囲が広がると、気づくのに時間を要することがわかりました。1人が見守る範囲を限定し、1人で広範囲を見守らないことが必要なのです。

 この実験は、「見守り範囲に人がいない」「見守り範囲は比較的、波が少ない」「発見対象がこれから出てくるという情報があり、集中して探せる」という条件下で行われたので、実際のプールでは、さらに発見が遅れると思われます。

移動しながら監視する

 水面の反射による影響についても検証を行いました。水面が反射すると、水中に人がいても全く見えないことが明らかになりました。

 監視を行うにあたり、外光・照明で、プールのどこに反射が起きるのかをチェックする必要があります。時間・天候によって反射は異なってくるので、条件を変えてチェックし、反射によって見えない場所がないように監視体制を整えることが大切です。

  • 1か所にとどまらず、移動しながら見守る。
  • 複数個所・複数の向きから見守る。
  • 視点の高さを変えて見守る。

 などの工夫が求められます。

監視の擬似体験をしてみよう

 YouTubeで「Lifeguard Rescue」で検索すると、たくさんの動画があります。プールの中には、たくさんの人が泳いでいて、これを監視するといっても、どこの誰を見ればいいのかよくわかりません。突然、ライフガードの人が浮き輪を抱えてプールに飛び込む映像が出てきて、やっと (おぼ) れかかった人がいたことがわかります。この動画を見ると、監視の難しさがよくわかると思います。

 このチャンネル以外でも、実際に溺れた状況が記録された映像をインターネット上でたくさん見ることができます。監視員がいても溺水事故が発生していることがよくわかります。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。産業技術総合研究所人工知能研究センター外来研究員、キッズデザイン賞副審査委員長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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