新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行
医療・健康・介護のコラム
「地域に住む人の居場所を作りたい」と東京・下町にイベントスペースのある診療所を開設
名付けて「まる福ホームクリニック」
新型コロナ禍もあってリモートでゲストと語り合うことが多かった「のぶさんのペイシェントカフェ」だが、今回は私が東京・荒川区でクリニックを開く医師の菅野哲也さん(47)に会いに行くことにした。なんせ、クリニックにカフェをやるようなスペースがあるからだ。
菅野さんは、乳幼児の診療から高齢者の在宅の 看取 り、新型コロナ感染者も診る総合診療医、つまりプロの町医者だ。2019年に開業した施設の名前は「まる福ホームクリニック」。「まる福」とは町の商店のような名前だ。
「参加していた街作りプロジェクトで使っていた『まるっと幸福』で『まる福』という名前をそのまま使っています。それに、福島県にあって閉店してしまった実家の雑貨屋の屋号が『丸福』なんです」
私は、二分脊椎症の障害や複数のがんにかかった経験があって、十数年前から少人数での医療系の勉強会を開催している。医療者、患者という枠を超えたその会に興味を持って来てくれてからのお付き合いだ。当時から「地域のコミュニティー、人がつながれる場になるような場をつくりたい」という夢を聞いていた。開業して半年余りで新型コロナが始まって苦労したと思うが、開業から3年、夢はどうなったのか興味がある。
診療所を受診するついでに、人と出会う場に
小さな町工場などが目につく下町っぽい地域にある。1階が診療所。2階はオープンスペースにして、ここで健康や教育など様々なイベントを開いている。かつてカフェを経営していた私はコーヒー教室を開催させていただいたことがある。その時は、私がいれたコーヒーを片手に、参加された皆さんが楽しそうに談笑していた。その時間は私にとっても至福だった。
そんなこの場に来た人がつながれるようなイベントスペースである。
「この地域の診療所で12年間勤務医として診療してきたけど『昨日は一日だれとも話をしなかった』というようなひとりぼっちのお年寄りがよくいらっしゃて。診療のついでにここで話をしたり、人と出会ったりすることができるといいなぁと思うんですよね」
確かに健康寿命を延ばしたり、認知症を予防したりするには、地域に居場所があって、人を交流するのがいい、という話はよく聞く。そんな場所を作りたいと思ったというのはよくわかる。それでどんなことをしているのだろう。
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