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慢性骨髄性白血病 治療薬が続々と登場し、生存率向上…進行止まれば投薬中止も選択肢に

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 骨髄の中で血液をつくる造血幹細胞の遺伝子異常により、がん化した血液細胞が増え続ける慢性骨髄性白血病。進行を抑える分子標的薬の開発が進み、今春には新たな薬も登場しました。長期間の服用が基本ですが、再発の恐れがなければ薬の中止も可能であることを示す研究結果も報告されています。(野村昌玄)

10万人に1~2人

 慢性骨髄性白血病は、造血幹細胞の中に異常なBCR―ABLというたんぱく質ができ、がん化した血液細胞を過剰につくり出す病気で、10万人に1~2人の割合で発症すると考えられています。

 初期は目立った症状がなく、健康診断で白血球の数が多いことがきっかけに見つかるケースも少なくありません。進行すると、正常な白血球や赤血球、血小板がつくられなくなり、免疫の低下や貧血がひどくなるなどの症状が出ます。

 かつては有効な治療法に乏しく、3~5年後に病状が急激に悪化して亡くなる人が大半でした。しかし、2001年にBCR―ABLの働きを抑える分子標的薬の飲み薬が登場すると、病気の進行を長期間抑えられるようになりました。

 BCR―ABLにエネルギー源になる物質・ATPがくっつくと、がん化した血液細胞が際限なくつくり出されますが、この薬はATPの付着を妨げます。

 同様の仕組みの薬が次々と発売され、生存率は向上しました。1982年以前に診断を受けた患者の推定8年生存率は15%以下でしたが、2001年以降は87%と大幅に改善したとする海外の報告もあります。

 ただし、BCR―ABLが変形して薬が結合しづらくなるなど治療効果が低下することもあります。また、だるさやむくみ、こむら返りなどの副作用に悩む患者も少なくありません。

 こうした場合、別の薬への切り替えや休薬も検討します。今年5月に公的医療保険が認められたセムブリックスは、従来の薬とは異なるBCR―ABLの部位に付着し働きを抑えます。2種類以上の薬を使っても効果が得られなくなった患者を対象に使われます。

高額な薬剤費

 治療が功を奏して、がん化した血液細胞が一定期間ほぼ見つからなくなった患者には、薬の中止を試みることもあります。国内の臨床研究で、薬を1年以上中止しても半数以上が再発しなかったとする報告が複数あります。

 神奈川県内に住む田村英人さん(72)も10年以上飲み続けていた薬をやめて8年がたちましたが、再発の兆しはありません。「病気の進行予防だけではなく、薬をやめられることを目標にする患者が増えています」と期待を寄せます。

 薬の中止を試みる研究の背景にあるのは、高額な薬剤費です。患者や家族でつくる「いずみの会」が会員に実施した21年の調査によると、受診1回あたりに支払う医療費は平均6万4000円で、日常生活の困難なことがらでは「医療費の負担」(59%)が最多でした。

 国立がん研究センター東病院(千葉県)の血液腫瘍科科長の南陽介さんは「患者が再発のリスクや再治療の可能性も理解した上で、安定した状態にあれば、薬の中止も選択肢となるでしょう」と話しています。

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