産業医・夏目誠の「ストレスとの付き合い方」
医療・健康・介護のコラム
コロナ禍で仕事に最も退屈しているのが20代男性…このままでは新入社員が「深海魚」になる!
新型コロナの感染が落ち着き始め、街には日常の風景が戻りつつあります。しかし、2年半近くにわたる対面接触抑制とマスク生活は若手の社員に大きな影響を残しているようです。リモートワークと分散出勤で仕事の割り当て管理が難しくなり、社員により過大負荷と過少負荷が起こっていると言われています。その中で、新入社員はそれまでのような「オン・ザ・ジョブ・トレーニング」が難しくなり、過少負荷になっている可能性があります。
慶応大学が過少負荷による仕事の退屈度を調査したところ、20代男性が最も退屈を感じていることがわかりました。コロナが明けて、対面の仕事が増えてきた時にどうなるのか。若手社員が「深海魚」にならないか心配しています。
「深海魚って何?」。成績優秀で名門進学校に入学したものの、最初の試験で下位の成績となり、自信をなくして深海魚のように海の底に沈んだままで、再び浮かび上がらない例えです。新人として入社して、いざ本格的な業務が始まった時に対応できずに自信を失い、仕事ができないままの深海魚になってしまわないか。私が心配しているのはそこです。
対面営業が減り、言葉以外の相手の反応がわからない
慶応大学の研究を紹介する前に、新型コロナ禍について私たち産業医や看護師の受け止め方を紹介します。サービス業など3社を担当するベテラン産業医は「相談を受けていると、若手社員のことが気になりますね。営業職なら先輩と一緒に企業訪問して、商品の説明や相手側の反応にどう切り返すのか、実地に学び、身につけていきますよね。ところが、対面がなくなると、相手の表情や話し方などの非認知的能力を身につける機会がないんですよ。そういう話を聞きますね」と語ってくれました。
新型コロナ以前なら、新人は先輩とお客さんを訪問して、先輩のやりとりを横で聞きながら、要領を身につけていったことでしょう。そうして、新人もお客さんを任されるようになり、先輩の指導を受けながら、体にたたき込んでいくのです。その間に「それでいいよ。よくやったね」と認められて、「承認欲求」が満たされ、自信につながっていくものです。このプロセスを経験せずに、年単位で時間が過ぎていったのです。
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