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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

子どもの溺水事故が繰り返されるのはなぜ…プール活動中の映像を解析し、判明した事実とは

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226時間分の映像

 こうした指摘が実ったのか、2019年の春、消費者庁の担当者から保育管理下のプール活動を記録して分析する事業について相談を受けました。そこで同年の夏に、幼稚園、保育所や認定こども園など計10園に協力していただき、カメラを設置してプール活動・水遊びの様子を撮影、記録し、その映像データを解析しました。撮影された映像のうち、プール活動・水遊びの映像226時間分を監視・救助の資格を持つ専門家に見てもらい、 おぼ れ事故につながる危険性がある場面を抽出してもらったのです。

 その結果、すべての園で、保育士、教諭が子どもたちから目を離している時間、すなわち監視していない時間があることが確認されました。「転倒」、「飛び込み」、「プールのへりに乗る、座る、またぐ」、「プールの外から中をのぞき込む」、「プールの中で転んだ子どもの上に乗ってしまう」、「ふざけて他の子どもを沈める」などの危険な場面が見られました。

 この調査によって、監視が不十分になる具体的な状況が明らかになり、2020年5月、幼稚園や認定こども園、保育所向けに、子どもがプール活動や水遊びで溺れる事故を予防するためのイラスト付きの教材「プール活動・水遊び 監視のポイント」 が公開されました。

先生が監視に専念できる環境作りが重要

 さらに2021年4月には、 動画「幼稚園等のプール活動・水遊びでの溺れ事故を防ぐために」 が消費者安全調査委員会から配信されました。18分の動画で、やや長いのですが、監視の基本がとてもわかりやすく解説されており、プール活動をする前に、保育関係者の方にぜひ見ていただきたいと思います。

 このビデオで最も印象に残ったのは、「ほかの先生方が忙しくしている様子を見た時、それを手伝わないと後ろめたい気持ちになってしまうという先生方の声があった。監視役の先生は何もしていないのではなく、監視という子どもを守る大切な役割を果たしている。園長はそれを正しく認識し、適切な監視を実現するための人員の配置や指示をしてほしい。監視役の先生が監視に専念できる環境作りが重要」という指摘です。

 今後は、人手による監視ではなく、AIを使った機器による監視の開発が必要ではないかと考えています。(山中龍宏 緑園こどもクリニック院長)

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。産業技術総合研究所人工知能研究センター外来研究員、キッズデザイン賞副審査委員長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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