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ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 

医療・健康・介護のコラム

「混合介護」サービスって何?…高齢者のペット問題の解決策の一つとしても期待

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「混合介護」サービスって何?…高齢者のペット問題の解決策の一つとしても期待

犬の「文福」とくつろぐ入居者(「さくらの里山科」で)

  前回のコラム で、愛犬を飼っているために自力での生活が困難になった認知症の高齢者のエピソードをご紹介しました。認知症のせいで愛犬の餌やトイレの管理ができず、劣悪な衛生状態になってしまった結果、自立した生活の継続が不可能になり、ペットと暮らせる特別養護老人ホーム「さくらの里山科」に愛犬と一緒に入居したのです。

 この方の場合、ホームヘルパーにペットの世話を頼めていれば、自宅での生活をまだ続けることができていたかもしれません。その結果、特別養護老人ホームに入居しないですめば、国が負担する介護費用(介護保険から拠出する費用)や医療費が抑えられることにもつながると思います。

 しかし、現行の介護保険制度内では、ホームヘルパーがペットの世話をすることは、認められていません。

 ペットがいるために自立した生活が崩壊してしまった高齢者は全国に多数いると思います。ペットと暮らせる特別養護老人ホームである「さくらの里山科」には、この10年間で18人の高齢者が愛犬、愛猫と同伴入居しました。このうち6人は、認知症を患っているせいでペットの世話を適切に行うことができず、不衛生になるなど住環境が悪化してしまったケースでした。この方たちは、ホームヘルパーがペットの世話をすることができたら、もうしばらくは自宅での生活を続けられた可能性があります。

 ちなみに、残りの12人の方は、病気などで自力での生活が不可能になりながらも、ペットを置いてはどこにもいけないと、入院や入所を拒んで、必死になってペットの世話だけは辛うじて続けていた、というような状況でした。

 ホームヘルパーはペットの世話をしてはいけないのだという国の考え方もよく分かります。ホームヘルパー、すなわち訪問介護の事業は介護保険サービスの一つです。高齢者の介護を社会全体で支え合うという仕組みの介護保険は、私たちが支払っている保険料で賄われているのですが、保険料だけでは足りません。国と地方自治体から公費、すなわち税金も投入されているのです。国民の貴重な税金が使われている以上、ホームヘルパーがペットの世話まですることは許されないという理屈は分かります。

 そこで私としては、高齢者とペットの問題を解決する方法の一つが、「混合介護」だと考えています。混合介護とは、介護保険が適用されるサービスと、適用されないサービスを組み合わせることです。

 混合介護は、保険内と保険外のサービスを明確に区分して提供するなどの条件を満たせば、これまでも可能ではありました。ところが、区分の仕方に明確な指針がないことなどから実施に消極的な自治体があり、事業者などからルールの明確化が求められていました。このため、厚生労働省が2018年9月、新たな指針を自治体に通知。訪問介護では、保険外サービスを提供する段階で説明することや、介護保険サービスと費用請求を分けることなどを明示するなど、基準を整理し明確にしたことで、混合介護を利用できる範囲が従来よりも広がりました。

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若山 三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里山科」(神奈川県横須賀市)施設長

 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。20年6月、著書「看取みといぬ文福ぶんぷく 人の命に寄り添う奇跡のペット物語」(宝島社、1300円税別)が出版された。

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