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ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 

医療・健康・介護のコラム

「混合介護」サービスって何?…高齢者のペット問題の解決策の一つとしても期待

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ホームヘルパーが、ペットの世話を柔軟に

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高齢者とペットの問題の有効な解決策とは……

 この混合介護を用いれば、ホームヘルパーがペットの世話をすることが柔軟にできるようになります。例えば、午前10時に訪問したホームヘルパーが、10時25分まで高齢者の食事とトイレの介助を行い、10時25分から11時までは、ペットの餌やりとトイレ清掃、一緒に散歩をする、という具合です。時間と内容を明確に分ければ、一人のホームヘルパーが介護保険サービスの訪問介護業務と、保険外のペットの世話をしていいのです。こうしてホームヘルパーがペットの世話をできれば、高齢者とペットの問題は大幅に改善されるものと期待します。

 ところで、ペットの世話をしてもらうという点では、ペットシッターというビジネスがあります。認知症でペットの世話ができない高齢者はペットシッターを頼めばいいじゃないか、と思うかもしれませんが、費用が問題となります。ペットシッターの料金は、1時間3000円程度が目安となる所が多いようです。ペットの世話は毎日必要ですから、1日1回1時間利用するとしたら、1か月で9万円かかってしまいます。完璧とまではいかなくても、普段は自分で世話をして、3日に1回ペットシッターを頼んだとしても、1か月で3万円かかります。これは年金生活をしている高齢者にとっては、非常に厳しい出費です。

 ホームヘルパーが混合介護サービスとしてペットの世話をする場合、そこまで高額にはならない可能性があります。例に挙げたように、ホームヘルパーが1時間サービスを行ううちの35分間をペットの世話に充てる場合、ペットシッターの場合なら一般的な料金の目安は1500円程度となります。

 しかし、ホームヘルパーの本業は介護保険サービスです。保険外サービスであるペットの世話は、事業所にとってプラスアルファの収入ですから、安価に設定してくれる所もあるでしょう。35分間で1000円程度となる可能性も十分あると思います。

 そもそもペットシッターの場合、最低1時間の訪問からとなっている所が多いようです。ペットシッターもビジネスである以上、当然だと思います。そうなると最低でも1回3000円程度かかってしまいます。

 ホームヘルパーによる混合介護サービスの場合は、介護保険サービスと組み合わせることで、ペットの世話は30分のみ、ということが可能です。

 25分間の介護保険サービスの料金は、利用者負担が1割の場合は250円(介護保険の利用者負担は、利用者の収入によって1割、2割、3割と変わります)。35分間のペットの世話代が1000円だとしたら、合計しても1250円です。これを3日に1度頼んだ場合、1か月あたり1万2500円で済む計算になります。

 混合介護サービスでのペットの世話代が1000円というのは、根拠のない仮定の金額ですが、私としてはほぼ現実的な金額だとも考えています。従って、利用料負担の点からも、サービスの内容からも、混合介護サービスが、高齢者のペット問題の解決策の一つにはなるだろうと思われます。

 (若山三千彦 特別養護老人ホーム「さくらの里山科」施設長)

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若山 三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里山科」(神奈川県横須賀市)施設長

 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。20年6月、著書「看取みといぬ文福ぶんぷく 人の命に寄り添う奇跡のペット物語」(宝島社、1300円税別)が出版された。

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1件 のコメント

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ホームヘルパーによるペットのお世話

moa

ペットのお世話は介護保険サービスの対象外で、自費サービスとしてホームヘルパーがペットのお世話(ごはんやお水をあげる、トイレの始末、お散歩など)を...

ペットのお世話は介護保険サービスの対象外で、自費サービスとしてホームヘルパーがペットのお世話(ごはんやお水をあげる、トイレの始末、お散歩など)をされている事業所は多々見受けられるようになった気がします。これらの、いわゆるペットシッターとしての業務は、第一種動物取扱業の保管業務にあたりますが、無登録で営業されているところも多いようです。動物愛護管理法等も含めた法令遵守の事業所が増えることを願っております。

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