文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

知りたい!

医療・健康・介護のニュース・解説

子どもの弱視 片方だけなら気づきにくいことも…「屈折検査」で見つけた場合の治療法は

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 子どもの弱視は、早期の発見と治療が重要です。遠視や近視、乱視などがあり、治療が遅れると将来にわたり視力に影響が出る恐れもあります。日本眼科医会は昨年7月に視覚検査マニュアルを公表し、3歳児健診を実施する自治体に対し、目の状態を正確に調べられる「屈折検査」の導入を呼びかけています。(石川千佳)

左右差に注意

 私たちは、目に映った物や景色などの情報を脳で処理することで、初めて認識できます。どの程度細かいものが見えているかを示す数値が視力です。目の機能は6~8歳頃までに完成すると言われています。

 生後1か月頃にほぼゼロの視力は、脳の情報処理能力が上がるにつれて3歳頃までに急速に発達し、4歳頃の目安は1・0です。この「感受性期」に何らかの要因で視力の成長が止まり、視力が目安を下回り眼鏡をかけてもよく見えない状態になるのが弱視です。遠くも近くもぼんやりして見えにくいのが遠視、遠くのものが見えにくいのが近視、ピントが合わずにゆがみが生じるのが乱視です。

 両目が弱視なら、子どもは近寄って物を見ようとするなど行動に変化が表れます。問題は、片方の目だけが弱視で左右差がある場合です。「不同視弱視」と呼ばれており、脳が片方の目に映った情報だけを処理するようになるため、周囲が子どもの異常に気づかないケースも目立ちます。片方の視力の発達が阻害されると、空間を正しく捉えることが難しくなります。

 これを見つけるには3歳児健診などで検査する必要があります。大人と同じ「C字」(ランドルト環)による視力検査は3歳頃からできます。3歳未満は縦じまや絵を使います。次に行う屈折検査では、機器をのぞきこみ、映し出された気球の絵などを見ます。目に入った光がどのようにかえってくるかを分析し、遠視や近視、乱視などの状態を調べます。

 1991年から自治体が主体となり3歳児健診で視覚検査が導入されてきました。検査は3段階で行われますが、最初の検査は、各家庭で保護者が視力を調べます。正確性を欠くケースも多く、結果的に多くの子どもの弱視が見逃されてきたと考えられています。

検査機器の進歩

 近年はハンディータイプの屈折検査機器などが開発され、短時間で簡便な検査が可能となりました。日本眼科医会は、各自治体に対して3歳児健診で現行の視力検査に加え屈折検査も導入するよう求めています。

 弱視の治療には、早期に視力に合った眼鏡を使うことが重要です。目の網膜にピントがあった状態にして物を見続けることで、視力が次第に発達します。

 不同視弱視では、視力が回復した後も1日1時間程度、良い方の目を眼帯で覆う治療を行います。通常、視力は治療開始から数か月かけて徐々によくなります。

 京都府立医大講師の稗田牧さんは「弱視は、3歳児健診で早期発見し、感受性期のうちに治療を開始することが大切。矯正眼鏡を着けて1日を過ごすのは子どもに負担が大きいので、子どもが嫌にならないよう保護者が元気づけるなど心のケアをしてあげましょう」と話しています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

知りたい!の一覧を見る

最新記事