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発達障害の人と暮らす<反響編・上>「同じ境遇の人が頑張っていると思い涙が出ました」

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 5月23日~30日に掲載した「発達障害の人と暮らす」(全6回)には、多くの反響が寄せられた。連載では、夫が発達障害の一つ「自閉スペクトラム症(ASD)」の夫婦を取り上げた。

発達障害の人と暮らす<反響編・上>「同じ境遇の人が頑張っていると思い涙が出ました」

読者から寄せられたファクスやメール

 2人でいても孤独――。連載1回目で、夫に思いが伝わらず悩む妻の言葉を紹介すると、「結婚して33年、ずっと抱え込んでいたことを、一言で言い当てられたような気がします」と、関東地方に住む女性(62)から便りが届いた。

 この女性の夫は診断を受けていないが、興味・関心に偏りがあり、コミュニケーションが苦手といったASDの傾向があるといい、「一番つらいのが『伝わらない』ということ」だと訴えた。仕事に打ち込むことで、夫のことを深く考えないようにしてきたという女性は「記事を何度も読み、涙が出る思いでした」。

 東京都の女性(57)からは「今までの自分が認められたような思いになり、励まされました」との声が寄せられた。夫にASDの疑いがあるといい、「人の気持ちが分からない。子どもの今後のことを想像できず、意見がない。数人で話していると場違いのことを言う」などの言動に悩み、離婚を考えたこともあるという。

 そんな中で、「同じ境遇の人が頑張っていると思い涙が出ました」とつづる。

 高齢の親族への対応に苦悩する人もいる。

 横浜市の50歳代の女性は、義母の死去を機に、数年前から義父と同居している。「話し始めると止まらない。不注意を繰り返す」といった言動が目立つ義父。インターネットで調べると「発達障害」に行き当たった。「役所に相談すると、認知症の診察を勧められた」という。だが、検査の結果、可能性は低いと言われた。

 義父を発達障害の専門病院に連れて行こうか悩んだが、診断されたところで高齢の義父の行動は変わらないだろうと思い、やめた。幸い、夫は理解してくれるが、「現実的な解決の見通しはありません。自分の気持ちに折り合いをつけ、時には諦めながら、自分を見失わないように過ごしていくつもり」と記す。「共感できる内容があり、少し気持ちが楽になりました」

 発達障害の本人や家族の相談を多く受ける「青山こころの相談室」(東京都渋谷区)の代表で、臨床心理士の滝口のぞみさんは「思いが伝わらないのは、とても深い悩みだ。『自分が無価値だから、関心を持ってもらえない』と、思い詰める人もいる。一人で頑張りすぎず、自分を大切にしてほしい」と強調する。その上で、「ASDの人は、悪気はなく、学習することで言動が変わることがある。家族は、行政の窓口や専門家を頼ってほしい」と話す。

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