産業医・夏目誠の「ストレスとの付き合い方」
医療・健康・介護のコラム
人事異動後に起こりがちな「適応障害」、予防には、気軽に質問しやすい環境作りを!
「配転パニック」を起こさせるのは人事部門の問題!?
一方、①は私たち精神科産業医が「配転パニック」と呼ぶケースで、本人にとって不本意であったり、想定外の人事であったりした時に、強い不安に見舞われて、「パニック」になる状態を言います。当初のパニック状態を乗り越えて、適応していく方もいますが、中にはつらい気持ちが病気のレベルに達して、「適応障害」の治療が必要になることがあります。人事異動の判断には様々な要素が関係しているのだと思いますが、本人や上司から相談を受ける精神科医の立場から見ると、多くは人事関係者が社員の職務適性を十分に把握していない場合に生じるように思えます。
最も多い「適応障害」は、なんとか異動後の仕事に適応しようと頑張ってきた末に、つらさが増していってしまうという②のケースです。3か月たったころに起こることが多いです。
引き継ぎが不十分、上司にも聞けず一人で悩んだ
そうした適応障害の例を紹介します。メーカー総務係長の落合太郎さん(35歳、仮名)は企画係長に異動して、適応障害を起こし、回復した経験があります。どこに問題があったのか話してくれました。
「前任者が忙しいせいか、引き継ぎがていねいとは言えなくて、仕事の勘どころというかポイントが十分にのみ込めなかったんですよ。業務の優先順位とか、配慮が必要な人間関係とか……ですね。自分で考えて進めていたんですが、ポイントがわからないから時間ばかりかかって、残業も増えました」
気分は落ち込んで、夜眠れないので疲れは取れず、私のところに相談に来ました。1か月休職して復帰し、それからは元気に仕事に戻っています。振り返って、こう言います。「本当は、もっと気軽に上司の課長に相談すれば良かったんですよ。具合が悪くなった後で課長からも言われました。でも、自分としては、『こんなことも知らないのか』と言われたくないので、自分一人でやろうともがいていたんです。それに加えて頭を切り替えて、生活リズムを壊さないことも大事ですね。どんどん悪い方に行ってしまいますから」
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