Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」
医療・健康・介護のコラム
腫瘍内科医が少ないのはなぜですか?

イラスト:さかいゆは
がんに対する薬物療法を担当し、がんを抱える患者さんとともに歩む「腫瘍内科医」。その数は決して多くありません。日本臨床腫瘍学会が認定している「がん薬物療法専門医」の数は、2022年4月現在1604人です。東京都には250人、大阪府には163人の専門医がいる一方で、専門医が4人しかいない県(山梨県と和歌山県)もあり、10人未満の県は、13県になります。
がん薬物療法が発達 専門医が必要なはずだが……
全国どこの地域でも質の高いがん医療を受けられるように、400以上の「がん診療連携拠点病院」が指定されていて、「がん薬物療法に携わる専門的な知識及び技能を有する常勤の医師を1人以上配置する」という指定要件が定められています。しかし、がん薬物療法専門医が1人もいないがん診療連携拠点病院も多くあるのが現状です。1年間に約38万人ががんで亡くなる日本では、がん患者さんが腫瘍内科医に巡りあうのも容易なことではありません。
では、なぜ腫瘍内科医が少ないのでしょうか。
まず、日本には、医師数が全体的に少ないという問題があります。OECD(経済協力開発機構)の統計(OECD Health Statistics 2021)によれば、日本の人口1000人あたりの医師数は2.5人で、OECD加盟38か国の平均3.6人に比べて少なく、医師不足は社会問題になっています。どの診療科からも、医師が足りないという声が聞こえてきますが、産科、小児科、外科などは特に深刻なようです。腫瘍内科も明らかに足りていないわけですが、そもそも、日本では、「腫瘍内科」の認知度が低いため、社会問題としても認識されていないというのが現状です。
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