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熱中症予防に有効な「暑熱順化」って何?
もうすぐ夏が来ます。気を付けたいのが熱中症です。命に関わることもありますが、予防法があります。暑さが本格化する前に、体を暑さに慣らす「暑熱順化」で、熱中症にかかりにくい体を作りましょう。(加納昭彦)
熱放散で体温調節
人間の体は暑さを感じると、自律神経が働いて、 末梢 血管を広げて皮膚に流れる血液を多くしたり、発汗させたりして、体内にこもった熱を放散させ、体温を下げます。脳や内臓は熱に弱いからです。
しかし、高温の環境に長時間置かれると、脱水症状となって、皮膚に集まった血液の流れが滞り、熱放散による体温調節ができなくなります。こうした状態が続くと起こる熱けいれんや熱失神、熱射病などをまとめて「熱中症」と呼びます。
体が暑さに慣れていない時期に気温が上がった日や、急激に暑くなる梅雨明けなどは、特に熱中症への注意が必要な時期になります。
適度な運動で体温を上げ、体を暑さに慣らすことを「暑熱順化」といいます。
暑熱順化を行うと、発汗量を増やすなどの効果があります。汗などによって体内の熱を逃しやすくなるため、熱中症に強い体を作れます。
日本気象協会(東京)は2021年、「熱中症ゼロへ」プロジェクトの重点項目に暑熱順化を盛り込みました。この監修を行った帝京大教授の三宅康史さん(救急医学)は「健康な人なら、やや暑い環境で、ややきついと感じる運動を毎日30分ほど数日から2週間続けると、暑熱順化できます」と説明します。
おすすめはウォーキングです。1回30分を目安に、週5回行いましょう。帰宅時に1駅分歩くなど日常生活に組み入れましょう。
ジョギングやサイクリングのほか、ストレッチや筋トレなども効果的です。入浴時にしっかりと湯船につかったり、買い物や庭仕事をしたりするのでも構いません。
インターバル速歩
信州大特任教授の能勢博さん(スポーツ医科学)は、速歩きとゆっくり歩きを3分ずつ交互に行う「インターバル速歩」を提唱しています。速歩きは、本人がややきついと感じるスピードが効果的。1日5セット(30分間)を、週4日程度行うのが目安です。
ポイントは、終了後30分以内にコップ1杯(200cc)の牛乳もしくはヨーグルトをとること。能勢さんは「肝臓の働きが活発になり、2週間程度で汗のもととなる血液量が増えるなど、汗をかきやすくなります」と強調しています。
長野県松本市の山田 徳彦 さん(74)は5年前から、インターバル速歩を続けています。山田さんは「汗をかきやすくなりました。夏場の畑仕事も短時間なら、苦になりません」と話します。
厳しい暑さで知られる埼玉県熊谷市は、ラインアウトなどラグビーの動きを取り入れた運動「熊谷ラグササイズ」を作り、ユーチューブに運動の動画を投稿しています。
同市は、ラグビー・リーグワンの埼玉パナソニックワイルドナイツの本拠地です。考案したラグビー元日本代表の三宅 敬 さんは「ラグビーの動きを楽しみながら、暑さに負けない体を作ってほしい」と呼びかけています。
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