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発達障害の人と暮らす<6>自助会で語り合い共感

 自閉スペクトラム症(ASD)など、発達障害の特性がある人と暮らすパートナーが集まり、語り合う場がある。横浜市を拠点にパートナーを支援する団体「フルリール」が、4月10日に開いた会合には、首都圏から男女24人が参加し、悩みや体験を打ち明けた。

発達障害の人と暮らす<6>自助会で語り合い共感

「フルリール」の会合で、悩みを持つパートナーらの話を熱心に聞く真行(中央)

 「産後うつでつらい時、夫に『育児向いてないんじゃない?』と言われた。戸惑っていると、そう思った理由を延々と説明された」「私の夫は、言動を反省し始めたが、それまでがひどくて許せない」――。一人一人の心からの叫びに、参加者は深くうなずいた。

 フルリールは2014年に、働く人のメンタルケアをする「シニア産業カウンセラー」の資格を持つ 真行しんぎょう 結子さん(58)が設立した。月4回程度のペースで、語り合う場を開いている。

 真行さん自身、夫は診断を受けていないもののASDの特性があり、約20年悩んだ。周囲に孤独感を理解されず、精神科で「うつ状態」と診断され、会社を3年間休職した。15年に離婚し、「今は2人の子どもの親として、いい関係を築いている」という。

 こうした経験から、「自分を大切に生きることが、心身の不調から回復する道だと気づいた。その手助けをしたい」と真行さん。参加者も「他の人の心の傷の深さに共感できた」「仲間がいると分かり、救われた」などと話す。

 会合には、夫や妻が発達障害の診断を受けていなくても、その特性と重なる言動に悩むパートナーであれば誰でも参加できる。

 発達障害に詳しい、ハートクリニック横浜(横浜市)で院長を務める柏淳さんは「本人に問題意識がない場合、発達障害が疑われても、家族が医療機関を受診させることは難しい」と指摘する。医療の枠の中で対応してもらえず、悩むパートナーにとって、こうした取り組みは頼りになる。「似た境遇の人に共感してもらえると、メンタルの不調が緩和する人もいる」と話す。

 支援の輪は広がっている。フルリールに参加していた横浜市の女性(39)らが4月、新たな自助グループ「おやここ」を作った。夫や妻だけでなく、子どもにも発達障害がある人たちが語り合う。女性もこのケースで、「同じ状況の人と励まし合う場がほしかった」という。

 柏さんは「子どもに発達障害があると診断された後で、親も診断される場合がある。どこに相談したらいいか分からず、悩む人は少なくない」と説明。「こうした自助グループのほか、自治体が設けている『発達障害者支援センター』などの公的支援も活用してほしい」と助言している。(大沢奈穂)

(次は「変わる薬局」です)

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