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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

医療・健康・介護のコラム

「サル痘」っていったいどんな病気?

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人への感染、初確認は1970年

 サル痘ウイルスが見つかったのは1958年のことで、昔からその存在を知られていました。最初はデンマークのコペンハーゲンに輸入されたサルに発生した 水疱(すいほう) から見つかったのでした。

 人への感染が初めて確認されたのは1970年でした。現在のコンゴ民主共和国で、9歳の子供が天然痘のような病気になり、これが後にサル痘だと判明したのです。

 それ以来、中央アフリカ、西アフリカではときどきサル痘感染が発見されてきましたが、天然痘よりも重症化しにくい、比較的軽い病気だったこともあって、国際社会、感染症業界もおおむね、この病気を無視、あるいは軽視してきました。

 サル痘が感染症界で急に注目されたのは、実は2003年のことです。ちょうどこのとき、ぼくは米国での感染症後期研修(フェロー)の最終年度に入っていたので、当時の 喧騒(けんそう) をよく覚えています。

 米国のウィスコンシン、インディアナ、イリノイ、ミズーリ、カンザス、そしてオハイオという、複数の州をまたがってのサル痘が71例も報告されたのでした。白状すると、そのときまでぼくも「モンキーポックス、なんじゃそれ?」とこの病気についてはまったく無知でした。疫学調査により、このときの流行はサルではなく、プレイリードッグからの感染だったことが分かりました。

 分子疫学調査でさらに調査が進み、ガーナからテキサス州に輸入された複数の哺乳類がサル痘に感染しており、そこからプレイリードッグ、さらには人へと感染が広がったのでした。

 2018年、今度は3人の英国人がサル痘に感染しました。そのうち2人はナイジェリアへの旅行者で、そこで感染したのでした。もうひとりは医療従事者で、この2人のケアをしている際に感染したようでした。同年、イスラエルでも同様にナイジェリア渡航者がサル痘を発症しました。

感染経路は不明

 今回の欧米でのサル痘の流行は、ゲノム解析によると、2018年に英国やイスラエルに輸出されたナイジェリア由来のサル痘ウイルスによく似ているそうです。詳しい感染経路などについては本稿執筆時点ではまだよく分かっていませんが、これからだんだんと判明していくことと思います。

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岩田健太郎(いわた・けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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