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わきや手のひら、顔に大汗…夏の悩みは「多汗症」かも 治療で改善

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職場や学校の理解不足で症状悪化も

――汗の困りごとに対し、患者さん自身はどんな工夫をしていますか。

 多くの人は、わき汗に市販の制汗剤や汗わきパッドなどを使ったりして対処しています。手の多汗症では「ずっとタオルを握っている」という人もいますし、頭の多汗症では髪形を変える人もいます。あらゆることを試し、時間とお金をかけているのが、患者さんたちの実情です。

 また、人の多いところを避けるため、行動が制限され、友人との付き合いや異性に対しても消極的になる傾向があります。そのような経験が続き、一人で思い悩むうちに、うつ状態になる人もいます。また、多汗症という症状があまり知られていないため、職場や学校などで理解されず、親に相談しても「気のせいだよ」としか言ってもらえない。そうしたことが二重の苦痛となり、緊張を増すことでさらに悪化することもあるんです。

――治療にはどんな方法があるのでしょう。

 まず、わきの下の多汗症に対しては、発汗量を抑える外用の抗コリン薬を使用します。この薬はわきの下への使用のみ保険適用となっています。次に、塩化アルミニウム製剤があります。これは病院で調剤する塗り薬で、汗の出口を塞ぎます。全身どこでも使えますが、刺激があるため、約半数の人は皮膚炎が起こります。これらの二つの外用薬は、治療を継続することで効果を持続できる薬です。

 全身の多汗症や頭や顔の多汗症の人には、内服の抗コリン薬を使用することがあります。発汗を抑えますが、副作用により、唾液や涙の量が減ったり、眠くなったりすることがあります。

 重度の多汗症に対しては、ボツリヌス毒素製剤の注射を使うことがあります。保険が適用されるのは重度のわきの下の多汗症のみで、それ以外については自費診療となります。注射をした部分の汗を抑える作用が強く、効果は半年ほど続きます。ですから、夏に向かう季節に打つことが多いです。手足の多汗症には、手や足を水に浸して弱い電流を流す治療もあります。

 これらで症状が改善しない多汗症には、 胸腔(きょうくう) 鏡を使用して交感神経を遮断する手術も行われています。主に手のひらの多汗症が対象です。発汗は止まりますが、高い確率で他の部位の汗が増える代償性発汗が起きます。

 部位や症状によって、メリットと副作用を考慮しながら、これらの治療を組み合わせていくことになります。

我慢しないで受診を

――治療を受けた患者さんからは、どんな感想が聞かれますか。

 多汗症という症状が知られていないことや、医療機関に行くには心理的なハードルもあることから、受診までに時間がかかるケースが少なくありません。ですので、受診してみて、「早く来ればよかった」という感想が多いですね。「あきらめていたけれど、薬があると聞いて受診した」という人もいます。

 初めは市販の制汗剤などで対処してもいいんです。軽症の人であれば、それですむ場合もあります。それでだめなら、治療を受ければいい。多汗症の症状のピークは20~30代です。症状の強いときに我慢してしまうことにならないよう、悩んでいるのなら、早めの受診を考えてください。

ふじもと・ともこ  2001年、浜松医科大学卒。01年、東京医科歯科大皮膚科に入局。武蔵野赤十字病院などを経て、05年、同大学皮膚科助教。14年、都立大塚病院皮膚科医長。17年から池袋西口ふくろう皮膚科クリニック院長。

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