楢戸ひかる「シニアライフの羅針盤」
「人生100年時代」と言われるようになりました。この長い後半生、「今まで通り」のやり方では乗り切れないかもしれません。やがて来る「シニアライフ」を実りあるものにするためには、今、どんな備えをしておけばいいのか? お金のこと、そしてお金以外のこと……マネーライターの楢戸ひかるさんと一緒に考えていきましょう。
医療・健康・介護のコラム
パート加入、繰り下げ受給…知らなきゃ損の年金改正「四つのポイント」とは
年金改正 生活者目線でのポイントは?
さて、もう一つのトピックは、 2022年から年金制度の改正が順次施行されること です。
今回の改正のキーワードは、「多様性」と「持続可能」です。「これからは、多くの人が、より長く、多様な形で働く社会へと変化していきます。その変化に対応し、持続可能な仕組みとして構築されているのが今の年金制度です」(三好課長)。つまり、いろいろな働き方をする人がいて、年金もいろいろなもらい方があるということですね。
改正による四つの変更点を整理した上で、生活者目線でのポイントを挙げると表のようになります。
●2022年の年金制度改正「四つの変更点」
1 被用者保険の適用拡大
- 「被用者保険」とは、お勤めをする人が入る厚生年金や健康保険のことです。改正後はパートやアルバイトで働く人が被用者保険に加入できる可能性が高まります。
2 在職中の「お給料+年金」の線引き額が47万円に引き上げられた
- これまでは、60~64歳の人の「1か月のお給料+年金月額」が28万円を超えた時、超えた額に応じて年金の支給が停止されていました。改正後は、その線引きの額が47万円に引き上げられました。
3 年金の「繰り下げ」受給が75歳まで拡大した
- 年金を65歳より遅く受け取ることを「繰り下げ」受給、早く受給することを「繰り上げ」受給と言います。これまで70歳だった繰り下げ受給の上限が、改正後は75歳になりました。
4 確定拠出年金(DC)の加入可能要件の見直し
- DCとは、税制の優遇を受けながら、個人ごとに掛け金を積み立てて運用する自分だけの年金です。改正後は、年齢が高い人でも加入できるようになるなど、より柔軟で使い勝手のよい仕組みになります。
(厚生労働省HPより筆者作成)
「被用者保険の適用拡大」 で意識したいのは、いわゆる「扶養の範囲」です。結論からお伝えすると、 被用者保険に入ると、将来の老齢年金が増えるだけでなく、「今のあなた」の保障や保険も手厚くなります。 下の図の通り、年金には老後にもらえる「老齢年金」だけではなく、障害と認定されたら受け取る「 障害年金 」、あなたが亡くなった場合に家族が受け取る「遺族年金」があります。また、公的医療保険にも、被用者保険である健康保険独自の制度として、休業補償である「傷病手当金」や「出産手当金」があります。
●被用者保険に入ると保障・保険は手厚くなる
(厚生労働省HPより筆者作成)
年金の繰り下げ受給 については、 このコラムでもとりあげました 。年金を自分に最適化して受給するためには、「繰り上げ・繰り下げにより受給額が違ってくる」という知識が必要です。これまでは、繰り下げは70歳までで、受給額は最大で42%増でした。今回の改正で75歳まで繰り下げができるようになり、受給額は最大84%増となりました。
いかがでしたか? まずは、将来の年金受給見込み額を把握し、それをとっかかりにして、少しずつ公的年金制度への理解を深め、自分にとって最適な使い方ができるとよいですね。(楢戸ひかる マネーライター)
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