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Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」

医療・健康・介護のコラム

「年を取ったから、睡眠の質が落ちた」と考えていませんか?

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 こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に科学的見地からビシバシお答えします。

 中高年になると、「夜中に何度も目を覚ます」「眠りが浅い」など、睡眠に不満を感じるようになります。原因は「加齢によって眠りが浅くなるから」と言われてきましたが、実は健康でいる限り、睡眠はあまり老化しないことが分かりました。いったいどういうことなのでしょうか?

年齢による睡眠の変化は意外と小さい

「睡眠時間が短くなった」「夜中に目が覚める」を、「加齢だけのせい」と考えていませんか?

 若い頃は雷が鳴っても目を覚まさないほど爆睡できていた人でも、中高年になると小さな物音やベッドパートナーの寝返りで目を覚ますようになります。人の睡眠の深さが年齢とともに浅くなるためと考えられてきました。睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠に分けられます。さらにノンレム睡眠には、「深いノンレム睡眠(徐波睡眠)」と「浅いノンレム睡眠(浅睡眠)」があります。子ども、若者、中年、高齢者など各年齢層の人々で比較すると、一般的に年齢とともに「深いノンレム睡眠」が減るとされていました。

 これらは大部分の医学書に載っているほか、一般向けの記事にも書かれているため、広く知られています。ただ、トロント大学(カナダ)の研究者らが行った最近の研究によると、睡眠の加齢変化はこれまで考えられていたよりもずっと「軽微」であることが明らかになりました。彼らは過去に行われてきた多数の研究結果を総合した結果、平均して10歳年を取るごとに、1晩の総睡眠時間は約10分短縮(例:20歳から70歳までに約1時間短縮)、中途覚醒時間は約10分増加(約1時間増加)、寝つきにかかる時間は約1分延長(同5分延長)することが分かりました。

 どうでしょうか? 想像よりずっと小さい変化だと思いませんか?

【あわせて読みたい】睡眠の質を保つ栄養素とは?

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三島和夫(みしま・かずお)

秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授

 1987年、秋田大学医学部卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本生物学的精神医学会理事、日本学術会議連携会員。著書に「不眠症治療のパラダイムシフト」(編著、医薬ジャーナル社)、「やってはいけない眠り方」(青春新書プレイブックス)、「8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識」(共著、日経BP社)などがある。

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