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Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」

医療・健康・介護のコラム

「年を取ったから、睡眠の質が落ちた」と考えていませんか?

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「若い頃は8時間以上眠れていたが」

 またこの研究では、睡眠の深さが加齢によってほとんど変化しないことも明らかになり、注目されました。具体的には、浅いノンレム睡眠が少し増加するだけで、深いノンレム睡眠やレム睡眠には有意な加齢による変化が認められませんでした。先にも書いたように睡眠時間自体は年齢とともに緩やかに短くなるため、深いノンレム睡眠もその分、実時間としては短くなりますが、全体に占める割合は全く変わらないというのです。

 「そんな研究は、うそっぱちだ! 私は若い頃は8時間以上眠れていたけれど、今では4、5時間もすれば目が覚めてしまう。眠りが浅くて寝た気がしない」と嘆く声が聞こえてきそうです。

 そのような「実体験」と研究結果に食い違いが生じるにはいくつか原因があります。第一に、この研究で使われた睡眠データは非常に健康な人のものだということです。多くの高齢者では年齢とともに、痛みやかゆみ、頻尿など、睡眠を邪魔する症状が出てきます。ほとんどの研究では、高齢であっても持病のない方々が選び抜かれて参加しています。

若い頃のように日光を浴びることで

 またこの研究からは、睡眠の質にはそもそも非常に大きな個人差があることも読み取れます。例えば、ある研究に参加した高齢者の睡眠時間は若者に比較してかなり短いのに対して、別の研究では20歳代のそれと遜色ない長さだと報告されています。また、70歳代の高齢者の睡眠の特徴を報告した研究では、1晩の総睡眠時間を5~7時間と報告しており、それだけでも大きなばらつきですが、実に3分の1以上の高齢者が20歳代の若者の平均睡眠時間を上回っている結果になりました。

 逆に言えば、あまり眠れない若い人もそれなりにいるということです。これらの研究データを全て平均した結果、「20歳から70歳までに約1時間短縮」という小さめの変化しか生じないという結論になったのです。

 健康でいる限り、睡眠の老化のスピードは比較的ゆっくりしていると言えそうです。また、睡眠にはそもそも大きな個人差があるため、他の人の睡眠と自分のそれを比較しても無意味だと開き直りましょう。痛みやかゆみなどへの対処も大事ですが、食事や運動など生活習慣も睡眠の質に深く関わってきます。

 私たちは以前行った研究で、高齢者が日常生活で浴びる光の量が減っていること、一方で日中に日光のような強い光を浴びることでメラトニン(睡眠や体内時計を調整するホルモン)の分泌量が若者並みに増えて、睡眠が改善することを明らかにしました。

 睡眠が生活環境やライフスタイルによって変わり得ることを示す好例と言えましょう。(三島和夫 精神科医)

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三島和夫(みしま・かずお)

秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授

 1987年、秋田大学医学部卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事。著書に『不眠症治療のパラダイムシフト』(編著、医薬ジャーナル社)、『やってはいけない眠り方』(青春新書プレイブックス)、『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(共著、日経BP社)などがある。

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