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森本昌宏「痛みの医学事典」

医療・健康・介護のコラム

「勝手に足指が規則的に動く」と言う57歳患者 「痛む脚と動く足趾症候群」とは?

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 Sさん(57歳男性)は、「初めは足が冷たくしびれているようで、足の裏に何かが張り付いたような不快感があったんです。特に気にとめずにいたんですが、2年くらいたってから、ふくらはぎとアキレス (けん) が絞めつけられるように痛くなって、さらに足の指が勝手に動くようになってきたんです」として、私の外来を受診された。「痛みは、安静にしていると強くなるけど、歩いているとあまり気にならないんです」と言う。

靴を脱ぐと足指が小刻みに

「勝手に足指が規則的に動く」と言う57歳患者 「痛む脚と動く足趾症候群」とは?

 診察室で靴を脱いでもらって観察すると、確かに足の指が規則正しく小刻みに動いている。Sさんは、「家内には『睡眠中には動いてないよ』と言われています」と付け加えた。これらの症状、頭部のMRI(磁気共鳴画像)や脳波、神経伝導速度などの検査によって神経学的な異常が見いだせないこと、向精神薬の服用歴がないことなどから、「痛む脚と動く 足趾(そくし) 症候群」が疑われた。

 痛む脚と動く足趾症候群とは、いっぷう変わった病名ではあるが、「painful legs and moving toes」を直訳したものである。

中年から高齢の男性に多く

 片側または両側の下 (たい) から足に、やけるような、うずくような持続的な痛み、しびれるような不快感、足の指の不随意運動(意図していないのに出現する動き)を特徴とする症候群。足の指(特につま先)をくねらせながら、伸ばして曲げてといった連続的な動きを示すのが典型的である。まねようとしてもまねできない動きなのだ。この症候群を初めて紹介した医師のスピレーンらは、治療として試みた腰部交感神経節のブロック(神経の伝達をしゃ断する)が有効であったことから、運動神経と交感神経系との異常な関わりが、これらの症状を作り出しているのではないかと推察している。

 中年から高齢の男性に多くみられ(女性の2倍)、症状が数年間続くこともある。初めはつま先に近いところの深部に痛みやしびれ感があるだけだが、徐々に不随意運動を伴うようになる。なお、足の軽微なけが、帯状 疱疹(ほうしん) や単純疱疹、腰椎圧迫骨折、脊髄の異常、アルコール性多発ニューロパシーなどに伴って発症したとする報告もあるが、その原因はいまだ不明である。

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森本 昌宏(もりもと・まさひろ)

 大阪なんばクリニック本部長・痛みの治療センター長。
 1989年、大阪医科大学大学院修了。医学博士。同大学講師などを経て、2010年、近畿大学医学部麻酔科教授。19年4月から現職。日本ペインクリニック学会専門医、名誉会員。日本東洋医学会指導医。著書に『ペインクリニックと東洋医学』『痛いところに手が届く本』ほか多数。現在、大阪市北区の祐斎堂森本クリニックでも診療中。

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