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がん患者団体のリレー活動報告

医療・健康・介護のコラム

がんフォト*がんストーリー

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 「がんフォト*がんストーリー」は、がん経験者、家族・友人、がんに関わる医療従事者から写真とストーリーを募集し、ウェブサイトや会場で公開する活動に取り組んでいます。

 がんは、大変な病気です。つらいことはたくさんあるし、命を失うかもしれません。しかし、がんになっても人生の全てが消え去るわけではありません。それどころか、人との絆をより深く感じられたり、道端の花の美しさに気づけたり、これまで見逃していた日常の小さな喜びを見つけられることも多くあります。それらは、とても大切な心のあり方を教えてくれるもの。

 「もしそこに目を向けられたら、がんを取り巻く世界は少し違ったものになるはず」。そんな思いから、私たちの活動はスタートしました。

がんフォト*がんストーリー

古民家と路地をリノベーションした複合施設「上野桜木あたり」で開催した第1回写真展イベントの様子(2018年10月、東京都台東区で)

がん経験者、家族・友人、医療従事者が“思い”を共有

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第1回写真展イベントで、「スマホ写真撮影講座」を受講する参加者ら。右から3人目が木口マリ代表

 「ちょっとすてきな“がんのリアル”が見える写真展」――それが、がんフォト*がんストーリーです。

 私たちが集めているのは「つらかった思い出」ではありません。困難な経験の中で見つけた、「ちょっとすてきな瞬間」をまとめています。

 様々な立場の人を応募対象としていることにも、理由があります。患者、家族・友人、医療従事者は、それぞれがまったく違う思いを抱えています。ところが、お互いにその気持ちを知らないでいることが、とても多いのです。作品を通して、それぞれの心の内を共有する場になればと考えました。

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同イベントで、国立がん研究センター中央病院に寄付するタペストリーを制作する参加者

 いずれの作品も、心がじんわりと温かくなったり、「すごい!」と感動したり、クスッと笑えたりする、人の思いが伝わるものばかり。写真展では、作品を見て気持ちが込み上げて涙する人もいます。しかし、それは悲しみからではなく、「生き方にグッときた」「勇気をもらった」と話す人がほとんどです。

ワクワクするような空間でイベント開催

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第2回写真展イベント「作品と音楽とお酒。五感で楽しみ・伝えるがんイベント」の様子(2019年12月、東京都千代田区のワテラスコモンで)

 がんフォト*がんストーリーでは、年に1回程度、会場を設けて、写真の作品展、ワークショップ、交流会などが一緒に楽しめる「写真展イベント」を開催しています(2021年11月は、リアル+オンライン配信のイベントを開催。そのほか、コラボイベントやブース出展多数)。

 イベントで基本としているのは、行くだけでもワクワクするような立地に加え、誰でも入れるオープンな会場であること。これまで、古民家や路地裏、カフェを併設したおしゃれなギャラリー、歴史あるレンガ建築を会場としてきました。がん経験者や家族が楽しいだけでなく、がんに関心がない人も入りやすい空間を常に意識しています。

 それは、「世の中の、“がん”のイメージを変えていきたい」という思いが、活動の根本にあるためです。「ふと入った会場で、気づけば展示されているのはがんに関わる人の作品で、たまたま話をした人ががん患者さんだった!」となることを期待していました。実際に、「がんの人と初めて話した」という人もいました。本で読む知識や想像ではなく、自分自身の経験として「がんのリアル」を心に刻んでもらいたいと思っています。

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がんフォト*がんストーリーの写真企画「雑誌の表紙になっちゃおう」で撮影するイベント参加者。雑誌の表紙をかたどった巨大ポスターの前に立ち、コスプレアイテムを使ってスマートフォンで撮影

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リレー・フォー・ライフ・ジャパン東京上野で行われた企画「雑誌の見開きになっちゃおう」で撮影するイベント参加者。雑誌の見開きページをかたどった巨大ポスターの前に立ち、コスプレアイテムを使ってスマートフォンで撮影

ピアノ演奏を乗せたスライドムービーが好評

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がんフォト*がんストーリー5周年記念写真展イベントでの「オトフォト・プロジェクト」上映の様子。演奏は作曲家・ピアニストのマキシマハロウ氏(2021年11月、東京都新宿区の早稲田スコットホールギャラリーで)

 近年では、さまざまな人、団体、学会などが活動に協力してくれるようになりました。作品のスライドムービーに、オリジナルのピアノ曲をつけた「オトフォト・プロジェクト」は特に好評で、学会とのコラボレーション制作や、医科大学などでの上映も行っています。

 私たちは、「がんと向き合うにも、いつもしかめっ面をしていなくてもいい」と考えています。がんを楽しく知ったっていいし、笑顔で過ごしたっていい。それぞれに、自分なりのすてきな人生を送ってもらえたらと思います。

がんフォト*がんストーリー

 木口マリ代表(子宮 (けい) がん経験者、写真家・文筆家)とHANAさん(看護師)が共同で始めた病院内写真展を発展させ、2016年、オンライン写真展「がんフォト*がんストーリー」を設立した。クラウドファンディングで開催した第1回写真展イベントが好評を得て、新聞、雑誌、ラジオなど、様々なメディアで取り上げられた。日本サルコーマ治療研究学会、日本希少がん患者会ネットワーク、企業、行政機関などとのコラボレーション多数。応募作品は、随時ウェブサイトに掲載中。

ホームページ  https://www.ganphoto-ganstory.com
動画  https://www.youtube.com/channel/UC0VrN2lOWTc7yKR333EnFXg

 このコーナーでは、公益財団法人 正力厚生会が助成してきたがん患者団体の活動を、リレー形式でお伝えします。

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公益財団法人 正力厚生会

 正力厚生会は1943年(昭和18)に設立され、2009年に公益財団法人となりました。「がん医療フォーラム」の開催など、2006年度からは「がん患者とその家族への支援」に重点を置いた事業を続けています。
 現在は、医療機関への助成と、いずれも公募によるがん患者団体への助成(最大50万円)、読売日本交響楽団弦楽四重奏の病院コンサート(ハートフルコンサート)を、事業の3本柱としています。
 これからも、より質の高いがん患者支援事業を目指していきます。
 〒100-8055 東京都千代田区大手町1-7-1 読売新聞ビル29階
 (電話)03・3216・7122   (ファクス)03・3216・8676
  https://shourikikouseikai.or.jp/

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