森永康平「患者と医師のコミュ力を育てる」
自分の症状を医師にうまく伝えられない、医師の言っていることがわからない……といった経験はありませんか? 意思の疎通がうまくできないことで、深刻な結果を招くことだってあり得ます。患者と医師が良好なコミュニケーションを保つには、どんなことを意識すればいいのか。医師教育を研究する、とちの葉クリニック(宇都宮市)院長の森永康平さんがアドバイスします。
医療・健康・介護のコラム
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月経前の症状にも個人差
月経前症候群(PMS)についても、症状の強さは千差万別です。激烈な気分変動を伴う月経前不快気分障害(PMDD)も、最近になって知られるようになりました。PMSよりもはるかに強い症状が定期的に発生し、自分ではコントロール不能になるため、家族やパートナーからは、“毎月、鬼がとりついたようになる”という声も聞かれます。忘れてはいけないのは、周囲の理解が得られにくいことで、本人が誰よりもつらく思い、困っているだろうということです。
症状の強さや本人のキャパシティー、価値観、生まれ持った肉体や環境は、人によって違いますから、他人が「自分のものさし」をそのまま当てはめていいはずがありません。そして、「どのくらい日常生活に障害を与えているか」を見極めるのが、私たち医療従事者の役目です。
前回のコラム に登場した「自分の臭いが気になる青年」のように、実は、間違った解釈に起因する心の悩みが問題だった、ということもあります。これは、本人との対話でしかわからなかったことです。問診・診察の前と後で印象がガラッと変わることは少なくありません。
「気のせい」「甘え」と片付けない
このように、医師が「自分が持っている知識やフレームのどれに当てはまるかな?」という姿勢で臨むと、目の前の人を置いてけぼりにしてしまう落とし穴が待っています。一見、適当なようでも、自然体で臨んだ方が、ささいな異常に気付き、結果的に正しく診断できることもあります。また、当てはめる病名がないからといって、「気のせい」や「甘え」と片付けていいわけでもありません。
先入観を持たずに、対峙している目の前の人をしっかり見すえる。その上で、まだ自分が知り得ない情報が隠れているかもしれない、ということを忘れない。こういった心がけが必要なのは、患者の家族や周囲にいる人にとっても同じだと思います。(森永康平 とちの葉クリニック院長)
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