産業医・夏目誠の「ストレスとの付き合い方」
医療・健康・介護のコラム
新しい仕事についていけず「自分は駄目」と悩む49歳女性事務職……自己肯定感を高めることで仕事への意欲を回復
子育てとの両立の苦労が認められ
産業医 : 仕事との両立は大変だったでしょう。
加藤さん: 職場の協力もあって、何とかやってきました。
産業医 : 育児休暇や産休もありますが、長く休めば、仕事の上でブランクが生じますね。これまでも仕事の上で、多少、スムーズにいかないこともあったんじゃないですか。仕方のないことです。
加藤さん: (笑顔で)先生、ありがとうございます。このように言っていただくのは初めてです。夫も周りも、当たり前と思い込んでいますから。
産業医 : いや、本当に頑張ってきましたよ。
加藤さん: (目を潤ませて)仕事を頑張ってみます。わからない点は、詳しい人に聞いて、任せられれば任せてみます。
産業医 : そうそう、そうしましょう。
加藤さん: (明るい表情で)やります。先生、ありがとうございました。
自己肯定感が回復すれば、仕事も変わる
夫からも会社からも当たり前と思われていた子育ての苦労を、改めて第三者から認められたことで、「駄目な自分」という認知のゆがみが修正されてきたようです。私は、何度も繰り返し、加藤さんが仕事との両立で頑張ってきたことを伝えました。このように当事者が「当たり前」と思いこみ、思い込まされ、美点と気づかないことが隠れています。そこに目を向けさせ、受け入れやすくするように伝えること。それが肯定感をよみがえらせるのです。
自己肯定感があれば、わからないことを若い人に質問することだって、気になりません。働き方の問題も解決に向かいました。良い点を見つけることで、状態が改善した例を私は4人以上経験しました。子どもはほめて、認めて育てると言いますが、大人だって頑張ったことは認めて、ほめてもらいたいですよね。(夏目誠 精神科医)
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