産業医・夏目誠の「ストレスとの付き合い方」
医療・健康・介護のコラム
新しい仕事についていけず「自分は駄目」と悩む49歳女性事務職……自己肯定感を高めることで仕事への意欲を回復
精神科医になって半世紀。職場で問題を抱えた人や、2015年に従業員50人以上の事業所でストレスチェックが義務化されてからは、「高ストレス」と判定された人のカウンセリングをしてきました。上司との関係や職場の人間関係、仕事の内容、あるいは家庭の問題など様々な要因がストレスに関連していますが、相談に訪れる多くの方に共通しているのは、「自己肯定感(自分が持っている良さに、気づく感情)の低さ」です。実際に果たしている役割や能力とはかかわりなく、自信がなく劣等感にとらわれています。それゆえ生きづらくなってしまう。どんなアドバイスをすれば、彼らの自己肯定感を高めることができるかを模索してきました。
自分の良い点に気づかない理由
だれにでも、長所や美点、取りえなどがあります。自己肯定感が低い人は、それに気づかず、受け止められなくなっています。なぜでしょうか? 臨床家の立場で見ていると、3点に要約できます。1.過剰ストレスや疲れた状態に陥り、視野が狭くなっている。2.「自分は駄目」と思い込む「認知のゆがみ」が起きている。3.周りに長所を指摘してくれる人がいない。
精神科医としては、必要ならお薬も使って、まず、心身を休めてもらいます。意欲を取り戻すために休養はとても重要なことです。それから、認知のゆがみを修正していくためにも、私はその人の良い点を見つけて伝え、受容できるように働きかけてきました。
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