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[スキャナー]不祥事で減産 後発薬、品薄続く…品質管理・安定供給 置き去り

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[スキャナー]不祥事で減産 後発薬、品薄続く…品質管理・安定供給 置き去り

調剤薬局では、後発薬不足で空のケースもあった(4月22日、小田薬局東伏見店で)=桐山弘太撮影

 薬局や医療機関でジェネリック医薬品(後発薬)の不足が続いている。後発薬メーカーで品質管理を巡る不祥事が相次ぎ、業務停止などにより減産した影響が解消できていない。混乱の背景には、政府が後発薬の使用を推進する中で、品質管理や安定供給の体制作りを置き去りにしてきた業界の構造的な問題がある。(医療部 西田真奈美、米山粛彦)

綱渡り

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 「いつ、どの薬が不足するか、綱渡りの状況です」

 東京都西東京市にある小田薬局東伏見店の管理薬剤師、小野啓一郎さんはため息をつく。

 同店には連日、卸売業者から「欠品」「入荷次第」と書かれたファクスが届く。高血圧やアレルギー、てんかんなど様々な後発薬の入荷が不安定で、同様の効果がある別の薬への変更を医師や患者に依頼せざるを得ないこともある。

 小野さんは「色や形が異なれば飲み間違う恐れもあるほか、患者の自己負担額が高くなる場合もある。早くこの状態を解消してほしい」と話す。

需要拡大

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 供給不足の発端は、後発薬メーカーで相次いだ不祥事だ。「小林化工」(福井県あわら市)では2020年12月、爪水虫などの治療薬に睡眠導入剤成分の混入が発覚。健康被害が拡大し、2人が死亡した。国への届け出と異なる製造方法など重大な違反があり、県から業務停止命令を受けて、製薬事業から撤退した。

 その後も、業界大手「日医工」(富山市)など、不正により業務停止命令を受けるメーカーが続出。業界全体で生産が停滞し、正常化には2年程度かかるとの見方もある。

 混乱を招いた背景の一つに、業界の品質管理に対する意識の低さがある。

 政府は医療費の抑制を目指し、後発薬の使用を推し進めてきた。02年度から後発薬を扱う医療機関や薬局に対する診療報酬を増額。07年の「経済財政改革の基本方針(骨太の方針)」では、使用割合の数値目標を初めて設定した。以降、目標値を引き上げ、21年9月時点で使用割合は79%と、10年間で倍増した。

 これに応じて市場が急拡大。「各社は、需要の増大に対応しようと製造効率を追い求めるあまり、品質管理がおろそかになった」と、小野俊介・東京大准教授(薬事行政)は指摘する。

余力なく

 もう一つは、急な増産に応じられない業界の生産体制の問題だ。

 後発薬の製造販売には、新薬の特許切れに合わせて複数のメーカーが参入し、1社で多くの品目を手がけるのが一般的だ。半年から1年先まで綿密な計画を立て、一つの製造ラインを使い回して複数の薬を作る。大手メーカーの担当者は「急に特定の薬を増産するのは難しい」と話す。

 薬価(薬の公定価格)は改定により下がり続ける。使用割合は約8割に達し、市場拡大は頭打ちで、メーカーは設備投資に踏み切りにくい事情もある。

 一連の問題を受け、日本ジェネリック製薬協会は昨年度から、各メーカーの品質管理を外部機関がチェックする体制作りや、製造管理に関する相談窓口の設置を進めている。

 後発薬の普及に躍起となってきた政府も、昨年の骨太の方針で、品質や安定供給の信頼性の確保を対策の柱に位置づけた。

 武藤正樹・日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会代表理事は「このままでは患者が安心して後発薬を使えなくなる。改善に向け、官民で工程表を作成し、確実に実践していく必要がある」と話している。

 ◆ ジェネリック医薬品(後発薬) =特許が切れた新薬と同じ有効成分で作られる薬で、効果や安全性は同等とされる。新薬は研究開発に10年前後の期間と数百億円以上の費用がかかるのに対し、後発薬はそれぞれ3~4年、数億円とされ、薬価が安い。

買い占めや出荷調整も…流通量把握 仕組み不可欠

 後発薬の安定供給には、「流通の見える化」も不可欠だ。

 日本では現在、どの薬がどの程度不足しているのか把握する仕組みがない。

 このため、一部の薬局や医療機関では、品薄への不安から買い占める動きが目立つ。ある薬局経営者は「複数の卸売業者に注文し、多めに確保している」と明かす。これが混乱に拍車をかけ、足りているはずの薬も行き渡らないなど、実態以上の供給不足を引き起こしているという。

 メーカー側も、得意先の注文を優先し、新規の注文を断る「出荷調整」に走るケースもある。日本製薬団体連合会の調査では、昨年9月時点で、後発薬の3割に相当する約3000品目で、出荷を止めたり、調整したりしていた。

 厚生労働省は今年3月、医療機関や薬局に買い占めを控えるよう要請し、メーカーにも、約2000品目について出荷調整をやめるよう求めた。メーカー側は徐々に応じつつも、注文が殺到するリスクから慎重な姿勢を崩していない。

 一方、海外では、流通の見える化で安定供給を図る取り組みが進む。米食品医薬品局(FDA)は、メーカーなどから不足する薬の報告を受け、データベースで公表。医師や薬剤師に別の薬を選ぶように促し、入手困難を緩和できるという。

 神奈川県立保健福祉大の坂巻弘之教授(医薬品政策)は「日本でも、国などが品目ごとの供給量を一元的に把握し、即時に公開するデータベースが必要だ。供給不足に陥ったメーカーが増産計画を提出する仕組みも求められる」と話している。(医療部 加納昭彦)

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