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和菓子、日本酒、フルコース…進化する介護食 楽しみと意欲をいつまでも

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二の次だった「食の楽しみ」

和菓子、日本酒、フルコース…進化する介護食 楽しみと意欲をいつまでも

紫蘇餅(美濃与食品・京介食推進協議会提供)

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日本酒「斗瀞酒」(北川本家・同)

 甘いものが好きで、若い頃から和菓子に親しんできた人なら、年を取ってもそれを楽しみたいだろう。京都の伝統食にかかわるメーカーなどが19年に設立し、食のバリアフリーを目指す「京介食推進協議会」では、様々に工夫された「摂食・嚥下和菓子」も開発している。美濃与食品が販売しているみたらし団子、わらび餅、さくら餅などは、見た目も一般の和菓子と変わらない。お酒好きには、とろみのある日本酒「 ()(とろ)(さけ) 」(北川本家)もある。

 医師でもある同協議会の荒金英樹会長は、「以前、介護食といえば、勉強会を開いても安全性の議論ばかりで、食の楽しみという点は二の次でした」と話す。しかし、料亭で京料理の介護食を試食するイベントを行った時、障害のある妻を介護する男性が「妻が全部食べてくれた」と号泣する場面に出会った。事情を聞くと、いつもの介護食の味は好まないため食が進まず、管で胃に直接、栄養を流し込む「胃ろう」にも頼っているということだった。その出会いをきっかけに、京料理だけでなく、和菓子や豆腐、お酒、お茶など伝統食の職人と医師らによる協力が進んだという。「職人さんは味にこだわる。私たちは安全を確保する。今後は、医療的ケア児と家族に向けたイタリア料理の介護食にも取り組みたい」(荒金会長)とのことだ。

 食べたいものを食べられない高齢者がいるため、家族も食べたいものを我慢したり、別な場所で食事をとったりするケースも多いという。味も見た目も楽しめる介護食であれば、家族で食卓を囲みやすくなり、高齢者の食べる意欲の維持にもつながるだろう。

「レトルトから直接食べている」という声が

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カップ入りの介護食(キユーピー提供)

 介護する人の負担を減らすような製品も販売されている。キユーピーは18年、介護食に関するアンケートを実施。これによると、調理から後片付けまでにかかった時間は平均で79.3分だったが、介護者が60代以上の場合は平均109.6分もかかっていた。

 同社調理食品部の管理栄養士、北川原久美子さんは、「高齢の介護者ほど『手作りしてあげたい』と考え、調理の負担が重くなっていると思われます。しかし、自身が動くのも、キッチンに立っているのもつらくなってくる。そうした時には、市販の介護食を利用していただければ」と話す。同社では「心のハードル」を下げる意味で、ペースト状のおかゆも、米粉ではなく生米から作るなど、工程も手作りに近づける工夫をしているという。

 また、男性の介護者や一人暮らしが増え、市販の介護食も「レトルトパックから直接、食べている」という声が聞かれたことから、19年には電子レンジで簡単に調理できるカップ入りの介護食を発売し、現在は6種類を提供している。調理や洗い物にかかる負担と時間が減り、家族で話すゆとりが生まれることもあるだろう。

状態の変化に注意 医師らに相談しながら

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 介護食の選択肢が増えるなかで、注意すべきこともある。菊谷院長は、「市販の介護食は、かむ力やのみ込む機能の状態によって、段階的に分けて作られているが、それに構わず購入していく人も多いようです。その人には難しいものを食べて、誤嚥を起こす危険があります。介護される人の状態に合ったものを選ばなければいけませんし、その状態も変わっていきます。病院で食事を指導された時よりも改善していれば、もっと食べられるものが増えるかもしれない。反対に悪くなっていれば、状態にあった食事に変える必要があります。普段から、食事に関しても、医師や看護師に相談してほしい。お酒だってちょっとならいいかもしれません。食べたいものがあったら、医師らに聞いてみてください」と話している。

 有名レストランから日々の食卓まで、介護する人もされる人も周囲の人も、ともに食事を囲み、楽しむ……。それが当たり前になれば、「老い」へのイメージが少し変わるかもしれない。(梅崎正直 ヨミドクター)

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