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医療・健康・介護のコラム

好きなものを自分で食べて、生きる意欲に…「希望」の一膳でご飯をおいしく

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手が不自由な障害者や高齢者向けの箸を作る…宮保克行さん(42)

「自分で食べたい」お手伝い

 日本人にとって、箸は最も身近な食器と言っていいでしょう。ただ、障害や老化で普通の箸を使うのが困難になることがあります。たとえ手が不自由でも、「自分で食べたい」と思う人のお手伝いをできればと考え、握りやすく、デザインにもこだわった木の箸を作り続けています。

 短大で木材工芸を学んだ後、家具工房と福井県の酒蔵で働きました。10年ほど前、仕事の傍ら、趣味で作った100膳の箸を集めた個展を開きました。そこで知り合った脳性まひの男性に頼まれて箸を作ったことが、今につながっています。

 男性は、手を自由に動かせませんでした。でも、食事の様子を見せてもらうと、人さし指は比較的動くことに気づきました。そこで、熱で曲げた竹ひごのバネの弾力を使って、指1本でも動かしやすい箸を作りました。

 それまで手をグーの形にして箸を握りしめ、皿に顔を近づけて、かき込むように食べていた男性が、完成した箸で刺し身をつまみ、口に運ぶ様子を見て、自分の技術が人の役に立っているという喜びを味わいました。男性は2年ほど前に亡くなりましたが、あの時の「これでご飯がおいしく食べられる。ありがとう」という言葉は、私の宝物です。

 国産の桜材を使い、「希望の箸」と名付けた商品の特徴は、握る部分にあります。指に接する面積を広くして、手の力を効率よく箸先に伝えるようにしました。もう一つの特徴は、箸の内側に付けた磁石。反発力で箸先を開く動作を補助します。

 「もう一度、そばを箸ですすりたい」「好きな魚をフォークではなく、箸で食べたい」。買い求める動機は様々です。好きなものを箸を使って食べることは、生きる意欲と強く結びついていると感じています。

 食べ終えたとき、笑顔で「ごちそうさま」と言える。その一助になれるような箸を作り続けていきます。(聞き手・板垣茂良)

みやぼ・かつゆき 1980年、石川県生まれ。福井市で箸工房「Miyabow」を営む。主にオンラインで「希望の箸」や木製の皿などを販売している。全国の百貨店や書店で巡回販売もしている。

 希望の箸は、Miyabowのホームページ(https://miyabow.com/)から注文できます。

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