ココロブルーに効く話 小山文彦
医療・健康・介護のコラム
【Track24】――「化粧品かぶれ」から外出恐怖、抑うつ、不眠症へ――身体症状症の女性を回復させたものは
長引くコロナ禍の影響で、マスクを着けない人のほうが珍しくなりました。先日、私は、頬にかすり傷ができたのですが、マスクで覆っていたため、気づいた人はほとんどいなかっただろうと思います。そもそも、容姿の小さな変化について、自身が気にするほど他人は気にしないものかもしれません。しかし、ある日突然、顔がかぶれて赤くなれば、本人は当然気になるでしょうし、人によっては、自分の姿へ向ける注意(「自己注目」という)が過剰に高まることもあるでしょう。今回は、まだコロナ前に起きた、ある女性のエピソードです。
突然、現れた「肌の赤み」と「ヒリヒリ感」から
ある日の夕方、ユキエさん(37歳、会社員)は、普段より早く退社し、友人たちとの食事会へ向かいました。気のおけない顔ぶれでの会食は楽しいものです。この日は、ユキエさんを含めた女性3人の集まりで、さっそくワインの乾杯から始まりました。
その時、友人のエリさんが、ユキエさんの顔を見ながら、異変を指摘しました。
「ユキエ、もう酔ったみたいに、ほっぺが赤いよ」
ユキエさんは、とっさに笑って否定しましたが、時間がたつにつれ、だんだん両頬がヒリヒリする違和感を覚え始めていました。とはいえ、それぞれの近況や愚痴などで盛り上がり、食事会は2時間ほどでお開きになりました。
帰宅したユキエさんは、頬のヒリヒリ感、それに強い疲労を感じました。友人たちの仕事や人付き合いの充実ぶりは、当時のユキエさんの現状からすると、うらやましく、また、辛いものでした。遠方に赴任している恋人のタカシさんとは、数か月も会えておらず、最近は連絡も少なくなっていました。食事会でも話に上ったフレーズを思い出しながら、ユキエさんは、鏡に向かって独り言をつぶやきました。
「女の『厄年』かあ……」
その時、ユキエさんは、目の前に映った自分の頬の強い赤みに驚きました。
「化粧品かぶれ……?」
過去に化粧品で肌のトラブルになった経験はなく、思い当たるのは、前日に初めて使った洗顔料ぐらいでした。そうしている間にもヒリヒリ感は次第に強くなり、徐々に怖くなってきました。
深夜でしたが、先ほど別れたばかりのエリさん、それに恋人のタカシさんに、SNSのメッセージで状況を伝えました。なんとなく予想していたとおり、タカシさんではなく、エリさんから、すぐに返信があり、ある皮膚科クリニックへの受診を勧められました。
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