新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行
医療・健康・介護のコラム
音楽で高齢者がいきいきと過ごせる場づくりを目指す
東京や関東各県、大阪や兵庫で
彼女は音楽大学を卒業してすぐの2008年4月、知人と会社を設立した。会社名の「リリムジカ」は、イタリア語のリリカメンテ(叙情的に)とムジカ(音楽)を組み合わせた造語だ。
2020年には、東京や関東地方、大阪、兵庫の150か所以上の介護事業所で定期的に音楽プログラムを実施するなど、これまでの実施回数は1万回を超え、延べ参加者は15万人に上るという。
近年、有料老人ホームなどの高齢者向け施設や介護の現場では、利用者のリハビリテーションや生活の質の向上などを目的に、レクリエーションやイベントが数多く行われている。中でも音楽の占める役割は大きい。高齢者は音楽を通して昔の記憶を思い出し、笑顔が増える。
1回45分 一緒に歌ったり思い出話をしたり
プログラムは原則1回45分。それぞれの施設には基本的に同じミュージックファシリテーターが1人で出向く。8曲ほど一緒に歌うことが多い。
歌うばかりではない。楽器を一緒に演奏したり、おしゃべりを通して思い出を語ってもらったり、軽く体を動かしたりする。その時の雰囲気に合わせて、やることを多様に変化させていく。
利用者の皆さんと一緒に歌い、時間を共有し、そして「その人の可能性を広げていく」のだと、彼女は言う。
「じっと歌詞を見つめ、なにかを思い出し、涙を流し始めた方がいたんです」
施設の職員は、その利用者が歌詞の言葉を認識し、感情をあらわにする姿に驚いたらしい。日頃は曜日や日付をあまり認識できないのに、プログラムのある曜日は楽しみだと口にしたり、その日だけは自ら着替えたりする利用者もいるらしい。
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