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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

両親の外出中に2歳と1歳が焼死…部屋にはライター 必要だった安全対策

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子どもの安全への報告書に業界団体の強い抵抗

 そこで協議会では、火災の実態調査、ライターの流通、海外の規制など詳細な調査が行われ、提言として、子どもが簡単に操作することができないようにする「チャイルドレジスタンス(CR)対策」を早急に行う必要があると指摘し、この提言を経済産業省に提出しました。私は、この委員会の特別委員として参加しました。報告書をまとめるにあたり、ライターの業界団体の強い抵抗がありましたが、CR機能の必要性を明記することができました。

 その後、経産省の消費経済審議会製品安全部会で審議され、11年9月27日から、使い捨てライターや多目的ライターにCR機能の付加が義務付けられ、基準に適合した製品には「PSCマーク」がつけられています。 東京消防庁の2016~20年のデータ をみると、12歳以下の子どもによるライターが発火源になった火災は年間に7~23件起きていますが、5歳以下に限れば、17年に3件、18年と19年にそれぞれ1件の計5件しか発生していません。また、このうちの2件はCR機能のないライターによるものでした。規制がいかに有効であるかがよくわかります。

 製品について、法的に規制するには数多くのバリアがあります。一つの製品に関わるステークホルダー(利害関係者)はたくさんいて、規制への抵抗が強いこともよくあります。社会でルールを決めるためには、その製品や環境によって重症度が高い傷害が数多く発生していて、国民の生命や財産に大きな被害をもたらしているという事実を明らかにし、それらが起こらないよう規制する必要があることを訴え続けることです。そして、規制が行われたら、数年後には、その効果を数値で示して、社会で納得してもらう必要があります。(山中龍宏 緑園こどもクリニック院長)

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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