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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナの「反ワクチン問題」 「なあなあ」で済ませてはいけない理由とは

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「愚行権」はあるけれど…

 日本で用いられている新型コロナウイルスのワクチンが効果的で安全性が高いことは、質の高い研究で繰り返し確認されていますが、ある学会では、ワクチンの効果を否定したり、抗寄生虫薬の「イベルメクチン」を推奨したりする医師もいます。 イベルメクチンが新型コロナに効果がないことは、やはり質の高い研究 で示されており、臨床医学的にはコロナに対してこの薬の使用は推奨されるべきではありません。それでも、ソーシャルメディアや単行本でワクチンを否定したり、イベルメクチンを推奨したりする方があとを絶ちません。

 人間には表現の自由があります。間違った判断をする、いわゆる「愚行権」もあります。しかし、プロフェッショナルな学会が、そのような 誤謬(ごびゅう) に陥った方を壇上に招いてシンポジウムで発表させる、というのは感心しません。

 「プライマリー・ケア医は感染症の専門家じゃないんだから、そこは関係ないだろ」という意見もあるかもしれません。しかし、ぼくの見解を申すならば、新型コロナウイルス感染症のような疾患は、むしろプライマリー・ケア医こそが診療の主役になるべきです。

 確かに、最先端の生命維持装置を使うような重症コロナの患者は、集中治療の専門家に任せるべきだし、施設などの感染防御も感染制御のプロが行うべきでしょう。しかし、発熱患者の外来診療や在宅診療、ホテルなどでの療養者のケア……、つまり、大多数のコロナ感染者については、むしろプライマリー・ケアの専門領域だと思います。ワクチン接種のような予防医療も同様です。

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岩田健太郎(いわた・けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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