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妊娠中の生活習慣で子の自閉症リスク上昇 エコチル調査

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 九州大学大学院保健学部門教授の諸隈誠一氏らの研究グループは、子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)に参加した母児約7万組のデータを用いて、母親の妊娠中の睡眠時間や身体活動量といった生活習慣と、出生児の3歳時点での自閉症スペクトラム障害(ASD)診断との関連性について検討。その結果、母親の妊娠中の睡眠時間が不足および過眠傾向にあった群、身体活動量が少ない群では出生児がASDと診断されるリスクが上昇したと、Commun Med( 2022;2:35 )に発表した。

6万9,969組の母子を対象とした2種類の研究

妊娠中の生活習慣で子の自閉症リスク上昇 エコチル調査

※画像はイメージです

 近年、日本においてASDは増加傾向にあり、遺伝要因や環境要因が関連することが知られているが、発症のメカニズムは解明されていない。これまでに、妊娠前や妊娠中の母親の生活習慣と出生児のASDとの関連を検討した報告はなかった。

 そこで研究グループはエコチル調査のデータを用いて、妊娠前・妊娠中の母親の睡眠時間や身体活動量などの生活習慣が、出生児の3歳時点でのASDとの診断に関連するかどうかを検討した。

 エコチル調査は、胎児期から小児期にかけての化学物質への曝露が子の健康に及ぼす影響を明らかにするために、2010年度に日本全国で10万組の母児を対象として開始した大規模かつ長期にわたる出生コホート調査である。妊娠前・妊娠中の母親へのアンケートにより睡眠や身体活動量に関するデータを、出生後3年時のアンケートで子のASD診断の有無に関するデータを収集している。

 今回の研究では、調査参加者のうち、多胎妊娠や先天異常児などを除き、正期産(妊娠37週0日~41週日)であった母児6万9,969組のデータを抽出。対数二項回帰モデルを用いて妊娠前・妊娠中の生活習慣と子どもが3歳時点でASDと診断される関連を検討し、リスク比(RR)を算出した。

 母親の睡眠時間を基に、対象を〈1〉6時間未満群、〈2〉6時間以上7時間未満群、〈3〉7時間以上8時間未満群、〈4〉8時間以上9時間未満群、〈5〉9時間以上10時間未満群、〈6〉10時間以上群ーに分けて検討。妊娠中の身体活動量に関しては、対象を5つの群に分けて検討した。

身体活動量が最も多い母親から生まれた子供の診断RRは40%低下

 解析の結果、母親の妊娠中の睡眠時間が7時間以上8時間未満群に対し6時間未満群、9時間以上10時間未満群、10時間以上群では、子の3歳時点でのASD診断リスクが50~90%ほど(RR 1.46~1.87)高かった( 図1 )。

図1.妊娠中の母親の睡眠時間別に見た子の3歳時点におけるASD診断リスク

妊娠中の生活習慣で子の自閉症リスク上昇 エコチル調査

 また母親の身体活動量が最も多い群では、子の3歳時点のASDリスクが40%ほど(RR 0.61)低かった( 図2 )。

図2.妊娠中の母親の身体活動量別に見た子の3歳時点におけるASD診断リスク

妊娠中の生活習慣で子の自閉症リスク上昇 エコチル調査

(図1、2とも九州大学プレスリリースを基に編集部作成)

 一方、母親の妊娠前の睡眠時間や身体活動量と子のASD診断との間に関連は認められなかった。

食生活や出産後の子どもへの関わり方などの影響の可能性も

 諸隈氏らは、研究の限界として〈1〉母親の妊娠中の生活習慣と子の3歳時点のASD診断リスクとの因果関係を示したものではない、〈2〉妊娠中に適切な睡眠や身体活動の習慣があった母親は健康への意識が高く、結果に影響した可能性がある、〈3〉食生活や出産後の母子関係などの交絡因子ーを挙げた。その上で「母親の妊娠中の生活習慣が子どもの将来的なASDの発症と関連している可能性が示唆された」と結論している。妊娠中に睡眠を適切に取ることや身体活動量を増やすことで、子のASDのリスクが低減できるかは、今後のさらなる研究が必要と付言している。(小野寺尊允)

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