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森本昌宏「痛みの医学事典」

 頭痛、腰痛、膝の痛み……日々悩まされている症状はありませんか? 放っておけば、自分がつらいだけでなく、周囲の人まで憂鬱にしてしまいます。それだけでなく、痛みの根っこには、深刻な病が潜んでいることも。正しい知識で症状と向き合えるよう、痛み治療の専門家、森本昌宏さんがアドバイスします。

医療・健康・介護のコラム

台風や低気圧が近づくと増す痛み…原因は「自律神経」に

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血流減少で酸素不足 痛みを増幅する物質が生じ

 交感神経が興奮すると、血管が縮んで血流が減少する。その結果、組織では酸素不足が起きて、さまざまな物質(発痛作用があるブラジキニン、痛みを増強するプロスタグランジンなど)が作り出される。これらが痛みを伝える知覚神経を刺激して痛みを増幅する。

 交感神経系の過剰な緊張が原因となる痛みでは、「複合性局所 (とう)(つう) 症候群」が有名である。複合性局所疼痛症候群では、骨折や捻挫、打撲などのけが、注射や手術、抜歯といった医療行為、脳の血管障害、心筋 梗塞(こうそく) 、帯状 疱疹(ほうしん) などによって末梢神経が傷つけられることで、交感神経の持続的な興奮を招き、 () けるような痛みやアロディニアを引き起こす。アロディニアとは、通常は痛みとは感じない程度の刺激によって痛みが生じ、その部位に風が当たるだけでも痛くなる状態だ。

宇宙酔いも交感神経系の異常

 さて、宇宙旅行も夢ではない時代になった。宇宙での外部環境の変化、それに伴う人体の反応は地上での比ではない。1961年4月、旧ソ連のユーリー・ガガーリンが人類初の宇宙飛行(108分間)を行い、「地球は青かった」との言葉を残したが、その4か月後に約25時間にわたって宇宙を飛んだゲルマン・チトフは、“乗り物酔い”に似た症状(宇宙酔い)を経験した。宇宙ステーションの時代を迎えてからは、循環機能の失調(起立性低血圧)などが引き起こされることも判明。交感神経系の異常が関与していると考えられているのだ。宇宙ステーションに長期間滞在された野口聡一さんも、この交感神経系の異常による宇宙酔いを経験されたのだろうか?(森本昌宏 麻酔科医)

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森本 昌宏(もりもと・まさひろ)

 大阪なんばクリニック本部長・痛みの治療センター長。
 1989年、大阪医科大学大学院修了。医学博士。同大学講師などを経て、2010年、近畿大学医学部麻酔科教授。19年4月から現職。日本ペインクリニック学会専門医、名誉会員。日本東洋医学会指導医。著書に『ペインクリニックと東洋医学』『痛いところに手が届く本』ほか多数。現在、大阪市北区の祐斎堂森本クリニックでも診療中。

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