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森本昌宏「痛みの医学事典」

医療・健康・介護のコラム

「体がだるい」「とにかく不安」は新入社員だけじゃない…5月に起きやすい「自律神経」のトラブル

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 “五月病”と呼ばれる厄介な病気(?)がある。5月は風薫る季節であり、「心身ともに一番調子がいい季節だなぁ」と感じられる方も多いだろう。しかし一方で、この時期になると、「疲れやすい」「イライラして落ち着かない」「眠れない」「食欲がない」「うつ病でしょうか?」と訴えられる方々が増え、話題となる。この五月病は、「激しい受験戦争や就職活動を勝ち抜いた結果、精も根も尽き果て、次の目標を見失って、心身のコンディションを崩した」と言われるが、あながち新入生や新入社員だけに見られる症状ではない。ゴ-ルデンウィーク明けともなると、「体がだるくてやる気がしない」「とにかく不安で」と、私の外来を受診する方が急増するのである。この五月病を解く鍵を握っているのが「自律神経」と「ストレス」なのだ。

早く仕事に慣れようと頑張っていたが…

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 Oさん(23歳、女性)は、ピカピカの社会人1年生である。「入社当初は気がはっていたこともあり、早く仕事に慣れようとガムシャラに頑張っていたんですが、ゴールデンウィークが明けてからは妙にだるくて、頭や肩が痛いんです」として、外来を受診された。血液検査やレントゲンに問題はなく、うつ状態の強さを判定するスコアが極端に高かった。前医では「自律神経失調症」と診断されていたとのことである。

 自律神経とは、体の内部からの情報や外部からの刺激に反応しながら生命を維持するために働いている神経である。交感神経(主に体を緊張させる)と副交感神経(主に体をリラックスさせる)があり、両者の微妙なバランスによって生命活動の恒常性を維持しているのである。なお、冬には寒さが刺激となって交感神経が緊張、夏は副交感神経の機能が優位になるのだが、5月はこの移行期となり、神経系のバランスが崩れる。このアンバランスがさまざまな不調を出現させて、その不調がストレスを引き起こすのだ。

 カナダの生理学者ハンス・セリエは、けがや出血、寒さや暑さ、強い光や音による刺激、激しい労働、精神的な圧迫、さらには痛みなどで、同じような反応が体に表れることを確認し、この反応を「ストレス」と命名した。そして、このストレスを引き起こす要因を「ストレッサ-」とした。ストレスが関与する病気は、「心身症」のほか、「高血圧症」「糖尿病」「過敏性腸症候群」「気管支 喘息(ぜんそく) 」「アトピー性皮膚炎」など枚挙にいとまがない。

精神的な緊張は肩の痛みに

 ストレスが原因となる痛みもある。例えば、物理的なストレスを受けると、骨がリモデリング(古い骨が吸収され、新しい骨が作りだされる)され、筋肉は肥大する。この変化によって、さらに大きなストレスに対抗できるようになるのだが、質的、量的に過大な負担がかかることで疲労骨折や筋肉の損傷を起こし、痛みを生じることがあるのだ。

 精神的な緊張が原因となって、肩の痛みを引き起こすことだってある。緊張によって肩に力が入ると、後 (けい) 部から (けん)(こう) 骨の内側に張っている僧帽筋などが収縮して、肩こり感を自覚する。さらには、これらの筋肉の収縮が血管を圧迫することで、筋肉への血液供給が減少し、ブラジキニンなどの痛みを引き起こす物質が産生されて、痛みを生じる。この筋肉の収縮が、後頭神経を刺激すると頭痛へと発展することもある。

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森本 昌宏(もりもと・まさひろ)

 大阪なんばクリニック本部長・痛みの治療センター長。
 1989年、大阪医科大学大学院修了。医学博士。同大学講師などを経て、2010年、近畿大学医学部麻酔科教授。19年4月から現職。日本ペインクリニック学会専門医、名誉会員。日本東洋医学会指導医。著書に『ペインクリニックと東洋医学』『痛いところに手が届く本』ほか多数。現在、大阪市北区の祐斎堂森本クリニックでも診療中。

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