がんのサポーティブケア
医療・健康・介護のコラム
外科医ならではのがん支持医療もあることを訴え 外科医の参加を促す
もとは「生存期間を延ばすことが第一」だったが……
――宇和川先生が支持医療に深く関わるようになったきっかけは何ですか。
膵臓がんに対する外科的手術・薬物療法を行う中で支持療法の必要性は感じていたとはいえ、外科医にありがちな「生存期間を延ばすことが第一」という考え方をずっとしていました。支持医療に対する認識が大きく変わったのは、前・日本がんサポーティブケア学会理事長の田村和夫先生との出会いがきっかけです。
第1回の学術集会の会長を慈恵医大の相羽惠介先生が務められることになり、事務局長として急遽(きゅうきょ)お手伝いすることになりました。開催まであと数か月と差し迫った時期でしたが、慌ただしく準備を進めるなかで田村先生と密にお話しさせていただき、がん支持医療に関する「田村哲学」に触れたことがとても大きかったです。
――どのような点に影響を受けたのですか。
がん支持医療におけるエビデンスを求めていこうという考え方です。それまでも、患者さんの生活の質が大事であることはもちろん理解はしていましたが、「寄り添う」といった抽象的な考え方には違和感を持っていました。
科学的な根拠に基づくがん支持医療が必要なんだという具体的な話を田村先生から聞いて、がん治療とがん支持医療、これこそ、がん医療における車の両輪なんだと気づかされました。自分の患者さんと照らし合わせてみても思うところは大きく、支持医療をちゃんと学ぼうと考えるに至りました。
小さな積み重ねが大事だと
――患者さんとのエピソードなどありましたら聴かせてください。
支持医療のおかげで患者さんが劇的によくなった、というドラマチックな話はありません。しかし、例えば膵臓がんの患者さんにがん悪液質治療薬を処方したところ、「体重が300グラム増えて、食欲も出てきました」という喜びの声を聞きました。たった300グラムかもしれませんが、そういった小さな積み重ねが大事だと感じています。
逆に、患者さんによかれと思って行った支持医療に中には、うまくいかなかったケースもあります。例えば薬物療法に伴うしびれの緩和目的で薬を使ったけれども、効果より副作用が上回ってしまい、その後副作用の少ない別の薬に変えてみたけれどもしびれはよくならず……といったケースです。
かつての自分であれば、あまり気にかけることのなかった患者さんからの訴えに対しても、何とか手を変え品を変えて、少しでも楽ながん治療にしたいと考えるようになったわけですが、がんの治療を継続するうえで、いかに支持医療の果たす役割が大きいかを実感しています。
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