解剖学者 養老孟司さん
一病息災
[解剖学者 養老孟司さん]心筋梗塞(2)競争心が強いタイプではないのに…太い動脈が詰まる直前に治療
2020年6月、体調不良で受診した東大病院で、「心筋 梗塞 」を起こしていることがわかった。
病名を聞いて、意外に思った。なぜなら、「心筋梗塞になりやすいとされる性格とは全く違うから」。
医学生時代に学んだドイツの診断学の教科書には、患者がドアを開けて入ってきて座るまでに、その性格を見極めよ、と書いてあった。心筋梗塞は、せっかちで、競争心が強いタイプに多い、と海外の研究で報告されている。
「老化という原因もある。長く生きていると仕方がない」
診察した中川恵一さんが、心電図の波形で異変に気づき、急ぎ血液検査の項目を追加。心筋に問題が生じていることを確認した。
脚の付け根から細い管(カテーテル)を心臓に通して様子をみる。すでに左側の細い血管が詰まっていた。太い動脈まで詰まれば、心臓への血流がとだえ、命に関わる。
そのまま、動脈を広げて、金属の管「ステント」を入れる治療を受け、ICU(集中治療室)へ。3日後、無事に一般病室へ移った。中川さんからは「ギリギリのタイミングだった。本当に強運です」と言われた。
心筋梗塞は強い胸の痛みを伴うものだが、なぜかこの時はまったくなかった。「糖尿病があったせいでしょう。痛みを感じなくなるのも症状の一つです」
それまで健康診断を避けてきたが、2週間の入院中に様々な検査をされることになった。
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解剖学者 養老孟司さん(84)
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