宮脇敦士「医療ビッグデータから見えてくるもの」
医療・健康・介護のコラム
最もリスクが高いグループに介入すれば最も効果が高い……とは限らない
効果のばらつきについて考える
今回で連載をもたせてもらって2年目に入ります。ありがとうございます。今回は、私がいま興味を持っているテーマについて紹介したいと思います。
それは、効果のばらつきです。
みなさんも、同じ治療でも人によって効果にばらつきがあるのを、なんとなく実感することがあると思います。この薬は、あの人にはとても効いたけど、私には全然効かない、などと感じたことはないでしょうか?
私たちが受けている様々な治療や薬、公衆衛生学的介入の効果・効能は、臨床試験や疫学研究で証明されているものがほとんどです。しかし、ここで証明されている効果・効能とは、基本的には、ある介入をすれば「集団全体で平均するとどのくらいの効果があるか?」を示しているのです。
集団全体での効果は同じように見えてもその中身は?
例えば、血圧の薬AとBがあって、両方とも平均で5血圧を下げる薬と評価されているとします。しかし、
・薬Aは血圧が10下がる人が半分、変わらない人も半分
・薬Bは全員が5下がる
だとすると、この2種類の薬は、集団全体の平均の効果は全く同じなのですが、中身は全く異なるということになります。
薬Aで血圧が下がらない半分の人にとっては、薬Bの方が薬Aよりも良い薬かもしれません。
しかし、処方している医師も、平均するとどれだけ効果があるかはわかっていても、目の前の患者にどれだけ効果があるかは正確にはわからない(データが不足している)ことが多いため、平均の効果で治療の判断をすることが多いのです。
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