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森本昌宏「痛みの医学事典」

 頭痛、腰痛、膝の痛み……日々悩まされている症状はありませんか? 放っておけば、自分がつらいだけでなく、周囲の人まで憂鬱にしてしまいます。それだけでなく、痛みの根っこには、深刻な病が潜んでいることも。正しい知識で症状と向き合えるよう、痛み治療の専門家、森本昌宏さんがアドバイスします。

医療・健康・介護のコラム

治らない頭痛は市販薬の使い過ぎかも…部位と症状でわかる「痛みの正体」

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 ぢれて出る座敷もはれぬ頭痛紙――。この古い川柳に詠まれている“頭痛紙”とは、梅干しを紙に塗ったもの(頭痛の治療薬として売られていた)である。多くの日本人が、かなり以前から頭痛に悩み、あれやこれやと対処法を考えてきたのだ。

一時しのぎに潜む大きな危険

治らない頭痛は市販薬の使い過ぎかも…部位と症状でわかる「痛みの正体」

 頭痛紙の時代から幾星霜、頭痛の治療法は飛躍的な進歩を遂げてきた。この30年に限っても隔世の感がある。現在では、健康をテーマにした雑誌やテレビ番組が頭痛特集を頻繁に取り上げており、優れた治療薬も手に入る時代になった。しかしである。頭痛を抱えながらも、薬局で買ったOTC医薬品でごまかしている方が少なくない。このOTC医薬品による一時しのぎには、大きな危険が潜んでいるのだ。頭痛薬の使い過ぎによって発症する「薬物乱用頭痛」の存在である。

 薬物乱用頭痛とは、薬剤の使用過多によって新しいタイプの頭痛が起きたり、もともとあった頭痛が悪化したりすることをいう。この状況に陥ってしまうと、そこからの脱出は困難を極め、医療者側も頭を抱えることになる。

 頭痛治療のポイントは、安易に頭痛薬に頼ることなく、自分を悩ませている頭痛がどのタイプの頭痛なのかを理解し、それに合った治療を選択することである。適切な治療の第一歩は、自分の頭痛が「頭痛分類」のどれに当てはまるのかを判断することなのである。正しい薬、治療法は、頭痛のタイプ別に異なるのだ。

 国際頭痛学会は1988年、頭痛の分類とその診断基準をまとめた「国際頭痛分類」を刊行した。頭痛のタイプ別に詳細な診断基準を提示したことは画期的であり、全世界で翻訳、活用された。2018年には第3版が刊行されている。国際頭痛分類では、頭痛を一次性頭痛(脳自体の障害に起因するものではなく、頭痛の90%以上を占める)と二次性頭痛(脳自体の障害などによって生じる)の二つに大きく分け、さらに3段階での細分化を行っている。頭痛のタイプを見極めるには、「痛みの性質と部位」「時間経過」「痛みが起こる時の状況」「ともなう症状」などを分析し、国際頭痛分類とのすり合わせをすることが糸口となる。私もこの分類を診断に活用し、基準に沿った治療を心掛けている。

突然、頭を殴られたような痛みなら…

 頭痛の診断では、まず、脳の障害などによって起きる二次性頭痛ではないことを確認しておくべきであろう。頭痛以外に意識障害、まひ、発熱などをともなっているなら、二次性頭痛が疑われる。また、突然、頭を殴られたようなガーンとした痛みに襲われた場合は、「くも膜下出血」などの脳の血管障害が疑われる。これらの特徴が見られたら、即座に医療機関を受診し、CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)診断を受けておくべきである。

 生命に関わることがある二次性のものではなく、一次性頭痛だと考えられた場合、私は、まずは「片頭痛」か否かを判別することから始めるべきだと考えている。

 片頭痛は、ズキズキとする拍動性の痛みを特徴とするが、「母親も片頭痛」「前ぶれとして 閃輝(せんき) 暗点(ぎらぎらとした光が見える)がある」「生理周期と関連する」「日常生活が制限される」などが確認できれば診断は容易である。また、音、光、においに過敏となり、香水のみならず、洗濯に用いる柔軟剤、香り付き合成洗剤などのにおいが頭痛発生の引き金となることが多い(最近は、これらは“香害”と呼ばれ、社会問題となっている)。

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森本 昌宏(もりもと・まさひろ)

 大阪なんばクリニック本部長・痛みの治療センター長。
 1989年、大阪医科大学大学院修了。医学博士。同大学講師などを経て、2010年、近畿大学医学部麻酔科教授。19年4月から現職。日本ペインクリニック学会専門医、名誉会員。日本東洋医学会指導医。著書に『ペインクリニックと東洋医学』『痛いところに手が届く本』ほか多数。現在、大阪市北区の祐斎堂森本クリニックでも診療中。

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