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石蔵文信の「男と女の楽しい更年期!」

医療・健康・介護のコラム

「がんで余命わずかな妻」と「その事実を受け入れない夫」に見える夫婦の景色

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 先日、患者さんの妻から「自分にがんが見つかって余命がいくばくもない」との連絡がありました。本人はもう高齢のため、ある程度、覚悟はできているようですが、夫は全くその事実を受け入れようとしていません。病院から帰ってくると、完全に治ったかのように考えて大変喜んでいるそうです。

困り果てた家族から相談が…

「がんで余命わずかな妻」と「その事実を受け入れない夫」に見える夫婦の景色

 妻や子供たちが病状を説明しても、一向に理解しようとしません。困り果てた家族が、私に相談を持ちかけたのですが、もちろん、こうした夫の状態が薬で改善するはずもなく、「妻が病気になったときの男性の普通の反応でしょう」とアドバイスをしました。パニックになった夫は、妻への愛情もあったのでしょうが、「自分の面倒を見てもらえなくなる」という不安も色濃かったと思われます。

 老後の男性は、「妻には健康で長生きしてほしい」と望んでいるようです。一方の女性は、あるアンケート結果によると、夫には健康に気をつけてほしいと思っているものの、「長生き」にはそれほど関心がないようです。妻に依存している男性は、少しでも妻が体調を崩すとうろたえ、嫌がっても無理に病院に連れていこうとします。幸いにも女性の方が一般的に健康で長生きをしますので、多くの男性は妻に 看取(みと) られることになりますが、これも夫婦仲が良いのが前提です。熟年離婚が減っているなかでも、70歳以降の離婚は増えています。いくら妻が健康でも、見捨てられれば、孤独な終末期を迎えざるをえません。

 妻が病気になったり、先に亡くなったりすると、男性は後を追うように亡くなることが多いと、様々なデータが教えています。 以前のコラム でも紹介しましたが。2012年の米国・ロチェスター工科大学の研究結果によると、「妻を亡くした男性は平均よりも早死にする可能性が30%高い」ということです。

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石蔵文信(いしくら・ふみのぶ)

 内科・循環器・性機能専門医。大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。大阪市内と都内で男性更年期外来を担当。主な著書に『夫源病』(大阪大学出版会)、『男のええ加減料理』(講談社)、『なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略』(幻冬舎新書)など。自転車による発電に取り組む「日本原始力発電所協会」代表を務め、男性向けの「ええかげん料理」の教室を各地で開くほか、孫育てに疲れた高齢者がネットで集う「孫育のグチ帳」を開設するなど多彩な活動をしている。ホームページは「男性更年期 夫源病 石蔵文信

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