一病息災
闘病記
[解剖学者 養老孟司さん]心筋梗塞(1)1年間に体重15キロ減 「身体の声」で受診したらまさかの入院
病院にはよほどのことがないかぎり行かない。健康診断は受けない。何年もそのように過ごしてきた。
「現代の医療システムに巻き込まれたくない」。それが理由だ。「今の医療は、統計やデータを重視して、個々の患者の身体の違いを見ようとしない。病院に行けば、情報化した医療に管理されることになる」
だが、2020年6月下旬、かつて教壇に立った東大医学部の付属病院を26年ぶりに受診した。
70キロ以上あった体重が1年間で約15キロ減少し、50キロ台になっていた。6月に入ってからは体調が悪く、やる気が出ない。しかも、受診日の直前3日間は眠くて寝てばかりだった。データではなく、感覚としての「身体の声」に耳を傾けた。「その声が病院に行くことを勧めた」という。
当時82歳。持病の糖尿病の悪化か、がんか、あるいは新型コロナ禍の巣ごもり生活による「コロナうつ」か、と自ら予想していた。診察したのは、東大時代の教え子で、がん治療で知られる中川恵一さん。一通りの検査をし、「念のため」と心電図も測定した。
鎌倉の自宅を出て、都心に来たのは久しぶり。病院の待合室で、妻や秘書と、「天ぷらでも食べて帰ろうか」と話していると、中川さんが急ぎ足でやってきた。「養老先生、心筋 梗塞 です。ここを動かないでください」
そのまま緊急の心臓カテーテル検査へ。2週間の入院生活の始まりだった。
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解剖学者 養老孟司 さん(84)
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